bool(true)

第17回 潤滑剤の劣化と診断法

2026.08.05

icon X icon Line icon Facebook icon Printer
技術・技能一覧に戻る

RMFJ株式会社
久藤 樹

出光興産株式会社にて潤滑管理業務に従事後、現在はRMFジャパン株式会社テクニカルコンサルタントとしてセミナーやコンサルタントを実施している。

資格:技術士(総合技術監理部門、機械部門)
   機械状態監視技術者(振動カテゴリーⅢ・トライボロジーⅢ)
著書:「基礎から学ぶ潤滑管理」(潤滑通信社)
   「一から学ぶ工業潤滑剤」(日刊工業新聞社) 

 連載第9回「潤滑診断による状態監視」で述べたように、潤滑診断の目的は、①潤滑診断により、設備の異常の予兆を捉え、故障する前に適切な保全を実施すること、②設備が故障する要因を監視・診断し、故障要因を事前に除去することです。
 機械の状態を監視する潤滑油診断法には、潤滑油の性状(粘度、色相、水分、酸価、不溶解分、ミリポアフィルタ等)分析により、潤滑油の劣化、添加剤の消耗、汚染を診断する方法と、潤滑油の摩耗粉分析(SOAP法やフェログラフ)から、機械の潤滑状態を診断する方法があります。今回は、潤滑剤の劣化診断とSOAP法について紹介します。

潤滑油の劣化

1.1 潤滑油の劣化に及ぼす因子
 潤滑油は使用しているうちに、周囲環境の影響を受けて劣化し、性状が徐々に変化します。潤滑油の劣化には、潤滑油自体の性状が変化する酸化劣化、添加剤の消耗、周囲からの異物の混入による汚染があります。連載第4回「油圧作動油の選定」で述べたように、潤滑剤の劣化は汚染をも含んだ意味で使用します。また、潤滑油の劣化については、潤滑剤自体の劣化、添加剤の消耗と汚染を含めて、「劣化の3要素」と呼んでいます。ここでは、潤滑剤の劣化について述べます。
 潤滑剤のうちの潤滑油の劣化に影響を与える要因について総体的にまとめたものを、図1に示します。熱と酸素の影響による酸化劣化が潤滑剤の代表的な劣化です。石油系炭化水素である潤滑油は酸化して過酸化物を生成し、次いで酸化を受けてアルコールやケトンさらにアルデヒドや酸を生成します。これら生成した酸はアルコール等と反応し、オキシ酸やエステル等の不安定な化合物となり、これらは重合して高分子の重合体になります(図2)。

図1 潤滑油の劣化に及ぼす要因

図2 酸化劣化の進行によるスラッジ

 潤滑油の酸化劣化を促進する外的要因として、次のことがあげられます。
(1)温度:酸化劣化は温度が高いほど進みます。酸化劣化反応は、温度が10℃上昇するごとに2倍進み、油の寿命は温度が10℃上昇するごとに半減します。
(2)酸素:酸化劣化反応は、酸素濃度が高い程進みます。
(3)各種金属:酸化触媒として作用します。
(4)混入異物:異物による摩耗の促進と摩擦熱の発生、酸化の促進を起こします。
 図3に、金属および水の共存下でのタービン油の酸化劣化の状態を調べた結果を示します。触媒金属および水が共存しない状態では3,500時間後の酸価は0.17mgKOH/gに対して、水だけでも共存すると3,500時間後の酸価は0.90mgKOH/gとなり、さらに銅触媒と水が共存すると約200時間で酸価は11.2mgKOH/gと酸化劣化が進行しています。

図3 潤滑油の酸化速度に及ぼす触媒および水の影響

 金属が酸化に及ぼす影響は大きく その影響度は、Cu>Feとなります。水が存在すると、影響度はさらに大きくなります。水は潤滑油基油の酸化劣化を促進する作用があり、潤滑油の使用管理において水分の管理が重要であることがわかります。この他、腐食性ガスや反応性ガスの触媒は油の酸化を促進したり、添加剤と反応してスラッジを生成したりすることがあります。

1.2 潤滑油の劣化に伴う性状変化
 潤滑油の酸化劣化に伴う性状変化は、図1に示すように粘度、色相、酸価、不溶解分などに現れることが多いです。潤滑油の新油の物理化学的性状は潤滑油の組成(基油及び添加剤)に依存し、油種によって異なります。また、潤滑油の劣化に伴う性状変化も潤滑油の組成によって異なります。性状変化は新油との対比で評価され、粘度などのように相対変化(比率)でみるものと、酸価などのように変化量でみるものがあります。表1に、使用油の性状変化からみた管理基準の目安を示します。

表1 潤滑油使用油の管理基準の目安

 潤滑油が酸化劣化すると粘度や酸価値が上昇します。劣化により、粘度が上昇して管理基準を超えることは稀なので、通常は酸価を定期的に測定することによって劣化度合いを把握します。潤滑油の定期的な分析は、潤滑管理に必要なことです。

この記事は、会員専用記事です。

会員になると、会員専用の記事もお読みいただけます。

技術・技能一覧に戻る