設備管理・保全
注目記事

装置材料の損傷・劣化「べからず集」Vol.12
2025.09.16
400℃以上で炭素鋼や低合金鋼を10年以上の長期間使用すると、図に模式的に示す様に経時的に「炭化物球状化」1)が発生・進行し、強度低下が生ずる。 炭素鋼は、同図中の初期に示す様に縞状に示すパーライト組織で、鉄と炭素の化合物が層状に分布することにより、強度を発現している。その層状の炭素鋼中の炭化物が、400℃以上程度の長期間の使用で、徐々に球状に変化し、材料としての強度の低下する現象が「炭化物球状化」である。強度の低下速度は、金属組織により異なり、温度が高いほど早い傾向がある。 また、炭素鋼や0.5%モリブデン鋼は、400℃以上の長期使用で、炭化物球状化と異なり「黒鉛化」2)と言って、鉄の炭化物が炭素(黒鉛)と鉄に分解し、強度の低下する現象の生ずる場合もある。 炭素鋼に応力が負荷されていない場合に問題が顕在化しないが、自重を含めて応力が負荷されて場合は炭化物球状化もしくは黒鉛化の発生により、規格で規定されている最低強度を下回る段階に至ると、装置の膨れ、座屈や破壊に至る場合がある。 このため400℃以上で炭素鋼や低合金鋼を長期間使用している場合は、炭化物球状化や黒鉛化の発生を監視しつつ使用する必要がある。 炭化物球状化の発生や進行を非破壊的に監視する方法としては、金属表面にてスンプ法を用いた組織観察実施や、部材の硬さを定期的に測定することが挙げられる。硬さから材料の強度が推定3)できるので、使用材料の推定強度が規格値の下限を下回った場合は、設備の更新を検討する必要がある。また、黒鉛化は、溶接熱影響部や母材部で局在化して発生する2)ことがあるので、現場での組織観察は、溶接熱影響部を中心に行う必要がある。

ものづくり屋視点による労働衛生の実践 No.7 許容できないリスクを低減する“改善”の考え方
2025.10.15

装置材料の損傷・劣化「べからず集」Vol.11
2025.09.01
SUS304やSUS316などの汎用のステンレス鋼製の装置や部材が鋭敏化(ステンレス鋼の結晶粒界に沿って連続にCr濃度の欠乏した領域の生ずる現象)1)した状態で常温(0~50℃程度)にて使用や放置することにより、写真2)に示すような金属の大気側外面から結晶粒界に沿って割れが、発生・伝播するタイプの応力腐食割れの発生3)する場合がある。 大気の湿度や表面付着物の存在によるが、多くの場合に常温の装置の外表面には目に見えないほど薄い水膜が存在し、腐食反応が生じている。その液膜が存在する状態で鋭敏化したステンレス鋼部材を用いると、金属の結晶粒界の優先的な腐食が生じ、粒界型の応力腐食割れの発生に至る。 この割れを抑制するためには、ステンレス鋼を鋭敏化させない状態で使用することが必要である。これには、SUS304LやSUS316Lなどの低炭素系ステンレス鋼を採用するとか、ステンレス鋼に機器製作工程などで高温の熱履歴を受けないようにすること、そして設備の使用開始前もしくは使用途中で鋭敏化していないかJISに規定される10%シュウ酸エッチング試験などで確認4)を行うことが挙げられる。もし、設備や部材が鋭敏化していると確認された場合は、使用を中止するか、可能であればその部材の溶体化熱処理を行うことが割れ発生の抑制策となる。 また、鋭敏化した状態のステンレス鋼を使用せざる得ない場合は、金属表面を液膜の存在しない乾燥状態に保つために、使用温度を50℃以上に保つことも対応策となる。

ものづくり屋視点による労働衛生の実践 No.6 全国労働衛生週間を再考する「過去・現在・近未来」
2025.09.16
記事一覧

ものづくり屋視点による労働衛生の実践 No.7 許容できないリスクを低減する“改善”の考え方
2025.10.15

装置材料の損傷・劣化「べからず集」Vol.14
2025.10.15

第7回 グリースの選定
2025.10.08

第7回 軸と軸受の力学(その4)
2025.10.08

装置材料の損傷・劣化「べからず集」Vol.13
2025.10.01

TPMとSCMの連携が生み出す「サステナブルサプライチェーン」#1
2025.09.26 無料会員

ものづくり屋視点による労働衛生の実践 No.6 全国労働衛生週間を再考する「過去・現在・近未来」
2025.09.16

装置材料の損傷・劣化「べからず集」Vol.12
2025.09.16

「自主保全」のススメ~近年の自主保全の取組み例のご紹介~⑥
2025.09.16 無料会員

指標でモノづくりを評価しよう! #6 故障件数
2025.09.12 無料会員

第6回 ギヤ油の選定と管理
2025.09.01

装置材料の損傷・劣化「べからず集」Vol.11
2025.09.01