設備管理・保全の価値を高める仕組みづくり
(1)当たり前を支える
設備管理・保全の貢献度や成果は、一見、目立ちにくいですが「設備がとどまらない」「不良が出ない」「事故が起きない」といった日々の安定稼働と安心・安全を守る重要な役割を担っています。
何も問題が起きない“当たり前”の維持・継続こそが、設備管理・保全の実力であり成果です。この“当たり前”が、生産現場の信頼と品質を支える大きな成果を生み出します。
図表―9のように、設備管理・保全部門の人員採用は困難化しています。保全員のモチベーション向上と人材流出による競争力低下のリスクを軽減するため、設備管理・保全業務の成果・貢献度を可視化して、社内評価制度や報酬・処遇に反映させる仕組みの整備が急務です。

図表―9 製造業で採用が困難な職種
(「2024メンテナンス実態調査報告書」,2025,JIPM)
そして、設備管理・保全成果・貢献度を明らかにするには、すでに「2.(2)KPIによる設備管理・保全成果の可視化」でも述べたとおり、KPI(重要業績評価指標)の設定や、年度ごとに社内報告や経営層へのプレゼンテーションなどを通じて、設備管理・保全活動の成果を「見える化」することが重要です(図表―10)。
| 指標 | 定義 |
| 設備総合効率(OEE) | 時間稼働率×性能稼働率×良品率 |
| 故障件数 | 月次・年次の故障発生件数 |
| MTBF | 平均故障間動作時間 (Mean Time Between Failures) |
| MTTR | 平均修理時間(Mean Time to Repair) |
| 予防保全率 | 予防保全/全保全件数 |
| 設備管理・保全費対売上比率 | 設備管理・保全費用を売上高で割った比率 |
図表―10 設備管理保全KPIの例
(2)社内評価制度への反映と定性的な評価
社内評価制度への反映も重要です。設備管理・保全成果を評価制度に反映するには、定量指標だけでなく定性評価も必要です。たとえば、トラブル未然防止の提案件数、改善活動への貢献度、他部門との連携力などを評価項目に加えることで、設備管理・保全員の総合的な能力を適切に評価できます。
さらに、報酬・処遇の改善も不可欠です。設備管理・保全は夜間や緊急対応など、他職種に比べて負荷が高いにもかかわらず、報酬体系が見合っていないケースも少なくありません。これを是正するためには、設備管理・保全職に特化した手当制度や昇進ルートの整備が望まれます。
設備管理・保全員が仕事に達成感を持てるよう、成果の共有と称賛の文化・風土が重要です。たとえば、トラブル未然防止事例を社内報で紹介する、改善提案が採用された際に表彰するなどの制度を設け、設備管理・保全業務の価値を社内に浸透させる仕組みが必要です。
(3)感謝と達成感の共有による設備管理・保全の魅力の形成
設備管理・保全業務の魅力の1つは、現場の「ありがとう」という言葉に象徴される、直接的な感謝を得られることです。たとえば、突発的な設備トラブルを迅速に復旧させた際、生産ラインの担当者や管理者から「助かった」「本当にありがとう」と声をかけられることがあります。こうした言葉は、設備管理・保全担当者にとって大きな達成感と誇りにつながります。
また、長期間にわたりトラブルゼロを達成した設備管理・保全部門が社内表彰を受けるなど、設備管理・保全活動の結果としてトラブルを未然に防ぎ、安定稼働を維持できた際には、目立たないながらも「何も起きないこと」が評価されることもあります。
設備管理・保全は製品を製造するわけではありませんが、「生産活動を止めない」ことで現場を支えています。その役割が認識され、感謝されることで、設備管理・保全担当者は仕事に誇りを持ち、さらなる技術向上や改善活動への意欲を高めます。こうした感謝や喜びの積重ねが、設備管理・保全という職種の魅力を形づくっています。
(4)設備管理・保全の魅力発信と若手人材の確保
最後に、設備管理・保全の魅力を社内外に発信する取組みも重要です。たとえば、設備管理・保全の仕事を紹介する動画コンテンツや、設備管理・保全員の一日を描いたSNS投稿など、若年層にも訴求できるメディアを通じて、設備管理・保全の専門性とやりがいを伝えていくべきです。こうした情報発信は、若手人材の採用や教育機関との連携にもつながり設備管理・保全職の魅力や地位向上が期待できます。
設備管理・保全は、ものづくりを支える基盤であり、新たな価値を創造する重要な機能・役割です。これからの時代において、その可能性をさらに広げ、持続的な成長と発展につなげていくことがますます期待されています。
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★本記事についてのお問合わせはJIPM/企画管理・調査研究部(rd@jipm.or.jp)まで