
今日の製造業において、設備管理・保全は単なる「コスト(経費)」ではなく、企業の競争力を左右する「投資」へと変貌を遂げています。
実際に、設備管理・保全を「生産性や利益を最大化するための投資」と位置付け、DXやスマートメンテナンスを導入する企業は増加傾向にあります。その一方で、依然として「発生した故障への対処」や「定期的な維持費」といった、受け身の経費と捉えている企業も少なくありません。
設備トラブルによる機会損失を防ぎ、利益を最大化することは、経営目標を達成するための重要課題の1つです。本稿では、保全の本質を見誤ることで生じるリスクを米国の調査資料を参照・整理し、設備管理を「経営戦略」として位置付ける価値とそのメリットについて説明します。
保全不足による「見えない巨大な損失」
保全を適切に行わないことで生じる損失は、単に「部品代」や「外注費」にとどまりません。保全起因による損失(予防可能な損失)は、以下のように企業の業績を大きく圧迫していることが明らかになっています。
- ・設備故障による直接損失
ライン・プロセス全体の稼働が止まり、製品をつくることができなくなる - ・不良品の発生
設備の機能が低下したまま稼働を続けると、精度が維持できなくなり、不良率が上昇。これは、仕損や再加工・手直しといったコストを発生させる・ - ・販売機会の損失(最大の落とし穴)
これらによる納期遅延や、不良品による未出荷は、顧客の信頼を損なうだけでなく、「売れるはずだった製品が売れなくなる」販売機会の損失を生む
少し古い資料ですが、米国国立標準技術研究所(NIST)が2016年に発行した「製造機械保全の経済学:米国のコストと利益に関する調査と分析」の調査*によると、保全起因の「突発故障による直接損失」は約181億ドル、「欠陥品による損失」は約8億ドルでした。それに対して、納期遅延や不良による「販売機会の損失」は、1,002億ドルにのぼると推計されています。保全不足が招く最大の痛手は、工場の中だけでなく、「売上の喪失」という形で利益に直結する形で発生していました。
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