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TPM活動がもたらす定量効果の分析

2026.06.23

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 日本プラントメンテナンス協会では、これまでに蓄積したさまざまなデータを整理・分析することで、産業界に役立つ情報や知見のデータベース化に努めています。
 今回は、2001年から2025年にかけてTPM優秀賞を受賞した2,500事業場超のデータを集計・分析し、明らかになったTPMの成果指標に関する最新の状況を報告します。

調査対象と方法

 TPMの成果指標(KPI)のうち、主要な8つの指標について、全業種の平均ならびに自動車(車両+輸送用部品)、食品、化学の3業種を対象に、TPM導入前(BM)からTPM優秀賞受賞時点(実績)までの増減率を調査しました。

(1)故障件数
(2)工程内不良率(廃棄+手直し)
(3)設備総合効率(OEE)
(4)クレーム件数
(5)主要製品の労働生産性
(6)生産リードタイム
(7)納期遵守率
(8)休業災害件数

注記
・労働生産性:一般的には、「従業員1人当たりの付加価値額」(=付加価値労働生産性)を指しますが、TPMでは、「主要製品に従事する従業員1人当たり生産数量」(=物的労働生産性)を指します。
・設備総合効率:他の記事当会HPで紹介しています。
・BM:Bench-Markの略で、活動の成果を測るためのスタートライン(基準点)を指します。
・各指標のBM把握から実績までの平均期間は約3年です。

調査結果

 各成果指標の実績(平均増減率)の調査結果は以下の通りです。

(1)故障件数
 故障件数は、BM(=100)比で 62.4%減となっています(図表-1)。  
 TPM活動により、事後保全から予防保全の体制に変わった結果、故障件数が大きく減少し、稼働率や品質の向上、製造原価、納期、災害件数の減少など、多くの面で効果が出ています。
 また、自動車、食品、化学を比較してみると、業種間に大きな差は見られませんでした。

図表-1 故障件数(指数)

(2)工程内不良率(廃棄+手直し) 
 工程内不良率は、BM比で 49.9%減となっています(図表-2)。
 自主保全による異常の早期発見・是正や、品質保全による不良の出ない設備条件の設定・維持などを通じて、不良の発生を源流で防止し、工程内不良率が減少したと考えられます。
 工程内不良率の減少により、品質の安定化、品質コストの削減などはもとより、納期の安定化、現場の負荷軽減、生産性向上など、多くのメリットを創出しています。
 3つの業種を比較してみると、食品がもっとも減少率が大きく、次いで自動車、化学の順となっています。化学の減少率が小さいのは、BM時にはすでに比較的レベルの高い設備の条件管理がなされており、TPMで削減できる余地が相対的に小さかった可能性が考えられます。

図表-2 工程内不良率(廃棄+手直し)(指数)

(3)クレーム件数
 クレーム件数は、BM比 で51.6%減となっています(図表-3)。
 工程内不良率で示した自主保全や品質保全に関する取組み例に加え、検査精度の向上や包装・輸送条件の整備など、流出防止と顧客視点での品質保証の施策の結果であると考えられます。クレーム件数の減少により、顧客満足度・信頼性の向上、市場流出不良の低減、ブランド・取引継続性の向上など、経営的なメリットももたらします。
 3つの業種を比較してみると、自動車がもっとも減少率が大きく、次いで化学、食品の順となっています。食品の改善率が小さいのは、異物混入や衛生・温度管理、原材料由来など、クレームになりやすいリスクが多く、また消費者が直接口にするため、クレーム化しやすい特性が関連している可能性があります。

図表-3 クレーム件数(指数)

(4)設備総合効率(OEE:Overall Equipment Effectiveness)
 設備総合効率は、BM比で 22.5%増となっています(図表-4)。
 TPM活動を通じて、故障やチョコ停、不良などが減少することで、設備の潜在的な生産能力が発揮され、設備総合効率が向上します。この結果、P(生産性)・Q(品質)・C(コスト)のみならず設備寿命の延長、納期の安定化、さらには投資効率向上(生産量増大に対応した設備投資の抑制)の効果をもたらします。
 3つの業種を比較してみると、自動車がやや増加率が大きく、次いで食品、化学の順となっています。化学の減少率がやや小さいのは、連続・安定操業の特性上、BM時点で、すでに設備総合効率がある程度高い水準であったため、TPMで向上できる余地が相対的に小さかった可能性が考えられます。

図表-4 設備総合効率(指数)

(5)生産リードタイム
 生産リードタイムは、BM比 で33.9%減となっています(図表-5)。
 TPM活動を通じて、故障やチョコ停、段取り・調整、不良や手直しなどが減少することで、工程内の滞留や、待ち時間、再加工・再検査時間といったロスが減り、同じ設備と人員で、より早く出荷できるようになります。このことは、在庫・コスト・投資負担を下げる効果をもたらすとともに、販売機会損失を防ぐ役割も果たします。
 3業種を比較してみると、自動車がやや減少率が大きく、次いで食品となり、化学の減少率はそれほど大きくありません。自動車は、手待ち・段取り時間や中間在庫などを減らすとリードタイムが大きく縮みやすいのに対し、化学は反応時間、温度管理、熟成管理など化学的なプロセスである特性上、効果が出にくい可能性があります。

図表-5 生産リードタイム(指数)

(6)納期遵守率
 納期遵守率は、BM比 で7.8%増となっています(図表-6)。
 TPM活動による故障削減やリードタイムの短縮によって、納期が保証されます。
 結果として、顧客への安定した製品供給を可能にし、顧客からの信頼を確保し、長期的な関係構築に貢献します。
 3業種を比較してみると、業種間で大きな差はありません。

図表-6 納期遵守率(指数)

(7)主要製品の労働生産性(従業員1人当たり生産数量)
 主要製品の労働生産性は、BM比で 42.1%と大きく増加しています(図表-7)。
 TPM活動を通じた設備停止の減少による稼働の安定化、不良や手直しの削減、現場の標準化、教育訓練などにより、労働生産性は大きく増加する可能性が高まります。  
 一方、主要製品の労働生産性の平均増加率が42.1%と高いことから、TPM活動とそれ以外の要因(需要変化などの外部要因、製品ミックスの改善、工程集約や設備更新、人員配置の見直しなど)の相乗効果により創出された成果であると考えられます。
 3業種を比較してみると、業種間に差はありますが、TPM活動/外部要因/経営的な判断など、何が影響しているか測りかねます。

図表-7 主要製品の労働生産性(指数)

(8)休業災害件数
 休業災害件数は、BM比で 67.0%減となっています(図表-8)。 
 自主保全の定着や計画保全(予防保全)の強化、職場環境の改善、安全教育の徹底など、「危険につながる状態を発生させない」、「危険な状態を見付けて先につぶす」、「安全に作業できる標準と設備に変える」といった取組みが成果につながったと考えられます。とくに故障や不良が減少するにつれ、その対応のための非定常作業が減少したことが災害の減少につながったと考えられます。
 3業種を比較してみると、業種間に大きな差は見られませんでした。

図表-8 休業災害件数(指数)

まとめと考察

 TPM優秀賞を受賞した事業場では、故障、不良、クレーム、災害の減少に加え、設備総合効率、生産リードタイム、納期遵守率の改善など、幅広い成果が確認されました。これらは、設備の安定稼働とロス削減を軸に、品質・安全・納期を同時に高めるTPMの有効性を示しています。
 なお、TPM優秀賞受賞事業場における労働生産性の大幅な向上は、TPM単独の成果によるものというよりは、ロスゼロや継続的改善といった基本思想を企業文化として定着させつつ、的確な経営判断や積極的投資を実行できる高度な組織能力を有していると考えられます。

※本記事へのお問合せは、JIPM・調査研究チームまで(rd@jipm.or.jp)

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