DX・デジタル
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DXの活用がカギ! 生まれの良い設備づくり ①
2025.12.24
設備の運転や保全データは、次期設備更新の際の設計情報として重要です。TPM(Total Prpductive Maintenance:全員参加の生産保全)では、この情報をMP情報、MP情報を生かした設計をMP設計として1990年代に定義しました。しかしながら、当時はデータ活用やナレッジなど、様々な問題があり、MP設計の実現は難しいものでした。ところが、近年ではDXにより「生まれの良い設備づくり」事例が増加しています。本稿では、設備のライフサイクルにおける情報の流れと設計への適用、注意点などを事例を交えて2回にわたって解説します。
第153回「隣の青い芝 と 増える技術的手段」
2025.12.10
ここ1ヶ月の間に、ふと「隣の芝が青かったので芝刈りを手伝いに行った」という迷言を口走りました。個人的に気に入ったので、今後の定番ネタにしようかと思っています。 私の特性として、技術・工作は好きな一方で、なにか面白い原案を思いつくことは苦手、という自己評価をしています。我が研究室は玉乗りロボットをはじめ、多彩なロボットメカトロ(ときにはメカニズムや計測処理手法)をつくっていますが、私がネタ元なものはあまりありません。玉乗りも、学生さんが「玉に載ってバランスをするロボットをつくりたい」と謎な希望をもったことが起点です。こうすれば実現できるという技術課題は解決しましたが、それでもなお、学生さんの思いつきがなければ、あれは(少なくともうちでは)誕生していません。例年の卒業研究のテーマも、基本的には学生さんの希望を聞いて、それをどう実現可能な技術にもちこむか、卒業研究としてふさわしい規模にするかという調整をしています。 それゆえ、私が「隣の芝が青く見える」程度はかなり強いのではないかと思います。自分がやっていることよりも、他の方がやっていること・やろうとしていることが面白そうに見え、「自分ならこう実現する」みたいな考えで盛り上がります。もちろん、あくまでその方のアイデアなので、普段は心の内でとめるのですが、すでに既発表のものであれば実際に試みることはあります(学生さんが既知のテーマを希望することも、新規性が無いなど言わずに、むしろ積極的にOKする場合がある)。ましてや、そこに協力要請があれば、面白がってほいほい手伝いにいきます。 普段持っている仕事に上乗せするので、いろいろと厳しくなるのですが、明確な利点もあります。まず第一には面白そうと思って取り組めることですが、「あれこれ考えて工夫する面白さが見える」ことが前提で、何もしなくても解決、あるいは、私でなくとも誰でも解決できそうなことではありません。技術系は工夫を考えることで引き出しが増え、その後のヒントの可能性も増えます。 第二に、しばしば「自分だと生じない課題」が出てくることです。様々な仕様的制約下で開発されている方にとっては日常茶飯事かもしれませんが、方針も含めて裁量の幅が広い自分の仕事の場合は、最初から実現性の高い方法の選択とそれを組み合わせる方針を選びます(たとえば加工法を意識した形状)。分野が異なるとそのような配慮抜きの要望がなされますが、この無茶に対して真剣に向き合うことは、自身の幅を拡げることに繋がります。
サステナブルなモノづくりのために No.106
2026.01.07
2025年10月21日に、デンソー東京大学社会連携講座「AI技術を活用して持続発展する次世代モノづくりインフラの構築」キックオフシンポジウムというのをやった。 2025年4月に、株式会社デンソーと筆者が兼担している東京大学大学院工学系研究科の人工物工学研究センターが共同で社会連携講座を立ち上げたのだが、方向性もそこそこ固まって来たし、お披露目をしましょうということで開催した。この社会連携講座(代表:太田順教授)(https://denso.fa.race.t.u-tokyo.ac.jp)は、「AI技術を活用して持続発展する次世代モノづくりインフラの構築」と長いタイトルがついているが、生産システムを対象として、生産管理、カイゼン、メンテナンスなどを統合的に管理するような「次世代生産システム運用基盤」を作りましょうというものである。 技術的には、デジタルをフルに活用しながら、AIの最新技術も取り入れて、フレームワークは我々のデジタル・トリプレットでということで、セールスポイントは「汎用性」である。業種を超えた様々な生産システムに適用可能な情報システムの「基盤」を作ろうとしている。もしくは、(ちょっと逃げておくと)基盤を作るための技術を開発しようとしている。例えるならば、生産ラインの不具合を見るときに、ビデオを設置して、収録して、後で専門家がビデオを見て分析すれば、7つのムダを発見できるよね。というのをデジタルとAIを活用してずっと高級にしたらどんなものになるか、そんなイメージである。筆者の班はもちろんデジタル・トリプレットの担当で、熟練者のカイゼン作業のお手本(我々の言葉で、GPM (General Process Model)と呼ぶ)を作って、この講座で開発する様々なツールを活用しながら問題解決の道案内するということをやろうとしている。 汎用性がキーワードになるとこれが意外と難しい。熟練者のお手本も特定の生産ライン、この連載でも何度も紹介している、人工物工学研究センター内にある「ラーニングファクトリー」を使って収集している。そうそう、これまでラーニングファクトリーは、主にデモぐらいしか活用してこなかったのだが、ようやくこのようにテストベッドとして活用する機会が増えてきた。この話はまた今度。 このお手本を様々な生産システムに転用できるようにGPMを記述しようとするのだが、どうしてももとの収集したお手本の中にはその生産システム固有の場所、機器、状況が入って来てしまうので結構難しい。一般化し過ぎると、問題を発見する、情報を収集する、原因の仮説を立てる、仮説を評価する、原因を同定する、・・・といった形でほとんど情報量のない当たり前のものが出来上がってしまう。今、生産システムのモデルとある程度一般的に記述したGPMを組み合わせることで、上手いこと個々の生産システムに合わせたカイゼン支援が行えないか、学生が絶賛苦戦中である。 話が脇に逸れたが、シンポジウムである。お陰様でオンラインを中心に200名以上の方に参加頂いた(最近、この手の催しをハイブリッドでやると3/4かそれ以上がオンライン参加になってしまって、会場はいつも寂しい)。勝因の1つは、早稲田大学の藤本隆宏先生に基調講演をお願いしたからであろう。先生にはこの社会連携講座について興味を持っていただいて基調講演をお引き受け頂いたのだが、様々にものづくりの未来の話をして頂いた。その中でも特に興味深かったのが、日本のものづくりが米中を代表とする世界の中で生き残る道があるかという話である(以下、先生の講演を聴いた筆者の理解であるし、妄想を膨らませている部分もあるので、文責は全て筆者にある)。 例えば、中国は製造業に関わる人口が3億人居るのに対して、日本は1,000万人しかいない。これじゃ量でもコストでも太刀打ちできる訳がない。そこで先生が出した勝ち筋が「面倒くさいものを作る」ということであった。作るのが面倒くさくて、合理的にいえば割りに合わないもの、新規参入が難しい(もしくは、バカバカしい)もの。半導体製造装置がそうかもしれないし、(先日久々に工場見学に行ったのだが)自動車のワイヤーハーネスなんて典型的かもしれない。 中国は、農村から都市部に流入した若者が主たる労働力であるし、アメリカも移民(これがどうなってしまうのだろう?)がそれである。そうすると、以心伝心、図面の深読み、すり合わせなどあり得ず、マニュアルに書いてあるとおり、それ以上でもそれ以下でもないものづくりになるので、難しい、面倒くさいものづくりはできないし、そこには近づかないというのが結論である。だからこそ藤本先生が昔から言われているパソコンであり、最近のEVの生産が中国で盛んということになる。 マニュアル化できるものづくりというのは自動化しやすい。だからこそ、中国は規模にものを言わせて、大規模な無人化工場を作る。別の人が言っていたのは、中国の工場は人を大事にしない自動化であって、日本のそれは人を大切にする自動化だそうである。中国で工場に人型ロボットを入れるというのが流行っているが、それが本当に必要なのかというのは大いに疑問であるが、常に最新の技術を使いながら、規模と開発速度で他の追従を許さないというのが中国のものづくりなのであろう。 それに対して、日本の技術者は高いレベルを維持しており(例えば、高専出身者が多い)、そういった人の技術力、判断力を使ってしか作れないものづくりに行くべきという話であった。筆者の担当であるデジタル・トリプレットもそういう、人のややこしい、面倒くさい判断を形式知化したいと思っている。 もしかしたら、形式知化したとしてもそれを使いこなすためには結構リテラシーが必要であって、誰にでも使いこなせるという訳ではないのかもしれない。こうなってくると、どこまで形式知化したらどのレベルの人が使えるようになるのかという際限の無い課題を扱わなければならなくなるのかもしれない。面倒くさいものを作ることを研究対象にするのはいろいろ面倒くさいのかもしれない。
サステナブルなモノづくりのために No.105
2025.12.03
この連載でも何回か紹介していると思うのだが、精密工学会ライフサイクルエンジニアリング専門委員会(絶賛、会員募集中です。専門委員会などといかめしい名称ですが、ただの勉強会です)で、先日、自動車リサイクル工場の見学に行った。見学自体は大変楽しい、興味深いものだったのだがそこで伺った話がなかなか憂鬱なものだった。 ご存知かと思うが、自動車リサイクル業界は、数あるリサイクル業の中でも最大のもので、廃車を引き取ってきて、解体して、破砕機(シュレッダー)にかけて、そこから、鉄、銅、アルミなど取り出してきてリサイクルし、残りはシュレッダーダストとして燃やすか、埋め立てる。というのが基本の流れで、国内リサイクルのメインの流れとなっている。 憂鬱な原因の第一は、商売のタネの廃車が減っていることである。まず、自動車販売台数が減っている。日本の人口減少は止まらないし、都会の若者は車を買わず、カーシェアリングがすっかり一般的になった。ここまでは皆さん想像がつくだろう。大きいのは、中古車の海外流出が止まらないことである(ただし、外国に規格がない軽自動車はほとんど輸出されないらしい)。 例えば、2019年度には、処理した廃車が約340万台、輸出が約100万台であったのが、2023年度には廃車が約270万台に減って、輸出が約160万台に増えている(https://www.jarc.or.jp/data/index/)。これは世界に名高い「高品質で長寿命な日本車(例えば、アフリカはランクルじゃないととか)」のお陰であって、日本型ものづくりの誇れるところであり、廃車に回すよりも使えるのなら中古車として再使用した方が資源面でもメリットがある。 国内での自動車の平均使用期間は13〜4年であって、諸外国に比べると大分短いし、日本人は丁寧に乗る、近年の円安で日本の中古車が割安になっている。という話はよく聞く話だが、決定的な役割を担っているがオークション業者である。解体業者が今までは逆有償で(つまり、カーオーナーからお金を貰って)引き取っていた廃車がオークションで売れてしまう、走らない車にも値がつくという状況だそうだ。 ここで大きいのは自動車リサイクル券の存在である。多くの人が意識していないが、自動車リサイクル法は前払い方式で、皆さん新車購入時にリサイクル料金(約10,000円)を先払いしており、リサイクル券が車検証と一緒に保管してあるはずである。廃車時には、この10,000円で、フロン、エアバッグ、シュレッダーダストの処理料金が賄われるのだが、中古車を輸出するときには、この10,000円が返還される。つまり、オークションを介して安い中古車を購入する輸出業者にしてみると、この10,000円は儲けとして確約されている訳である。この結果、オークション業者に対抗するためにお金を払って廃車を引き取らざるを得ず、解体業者にとってはコストアップになり、廃車も集まりにくくなる訳である。
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2026.01.07
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2026.01.07
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2025.10.29 無料会員
第151回「MRI診断 と 電気の流れる音」
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サステナブルなモノづくりのために No.103
2025.10.01
TPMとSCMの連携が生み出す「サステナブルサプライチェーン」#1
2025.09.26 無料会員