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からくり改善のための「機構学」入門 No.7 往復スライダクランク機構(その1)
2025.10.02
連載をWebメディアに移項してから「てこクランク機構」について6つの記事で解説を行ってきました。知識としては、「機構学」入門として取り扱う範囲において、自由に設計が行えるようになったのではないかと思います。 さて、今回からは、対象を往復スライダクランク機構に切り替えて解説していきたいと思います。
装置材料の損傷・劣化「べからず集」Vol.12
2025.09.16
400℃以上で炭素鋼や低合金鋼を10年以上の長期間使用すると、図に模式的に示す様に経時的に「炭化物球状化」1)が発生・進行し、強度低下が生ずる。 炭素鋼は、同図中の初期に示す様に縞状に示すパーライト組織で、鉄と炭素の化合物が層状に分布することにより、強度を発現している。その層状の炭素鋼中の炭化物が、400℃以上程度の長期間の使用で、徐々に球状に変化し、材料としての強度の低下する現象が「炭化物球状化」である。強度の低下速度は、金属組織により異なり、温度が高いほど早い傾向がある。 また、炭素鋼や0.5%モリブデン鋼は、400℃以上の長期使用で、炭化物球状化と異なり「黒鉛化」2)と言って、鉄の炭化物が炭素(黒鉛)と鉄に分解し、強度の低下する現象の生ずる場合もある。 炭素鋼に応力が負荷されていない場合に問題が顕在化しないが、自重を含めて応力が負荷されて場合は炭化物球状化もしくは黒鉛化の発生により、規格で規定されている最低強度を下回る段階に至ると、装置の膨れ、座屈や破壊に至る場合がある。 このため400℃以上で炭素鋼や低合金鋼を長期間使用している場合は、炭化物球状化や黒鉛化の発生を監視しつつ使用する必要がある。 炭化物球状化の発生や進行を非破壊的に監視する方法としては、金属表面にてスンプ法を用いた組織観察実施や、部材の硬さを定期的に測定することが挙げられる。硬さから材料の強度が推定3)できるので、使用材料の推定強度が規格値の下限を下回った場合は、設備の更新を検討する必要がある。また、黒鉛化は、溶接熱影響部や母材部で局在化して発生する2)ことがあるので、現場での組織観察は、溶接熱影響部を中心に行う必要がある。
サステナブルなモノづくりのために No.103
2025.10.01
先日、精密工学会技術賞が発表され、その一つにデンソーの「不確実な事業環境を勝ち抜くトリプルS生産システム」が選ばれた(https://www.denso.com/jp/ja/news/newsroom/2025/20250919-01/)。これは、デンソーの大安工場にある、可動式モジュールによる、かなり高度なスマート生産システムで、一度見学したことがあるのだが、大変面白かった。 トリプルSというのは、Sustainable(持続可能)、Smart(デジタル化)、Sensible(高感度)の意味で、若干こじつけの感があるが、システム自体は画期的だと感じた。基本、フローショップ方式の生産システムで、真ん中に搬送ラインがあって、そこに加工、組立などの機能を果たす設備モジュールを適宜接続して、多様な製品を製造できるようになっている。設備モジュールは、サイズと接続インタフェースが標準化されていて、AGVで簡単に移動できるようになっていて、自動でラインに接続できる。接続部分が工夫されていて、剛性も確保できるし、電源、通信、エア供給も自動で接続できるようになっていたし、遠中近3段階の位置補正技術を開発したことにより、加工、組立に必要な精度を自動的に確保できるようになっている。
装置材料の損傷・劣化「べからず集」Vol.13
2025.10.01
表に示すように常温や冷蔵(0℃近傍)の炭素鋼製や高張力鋼製の液体アンモニア(液安と略す)タンクに、応力腐食割れ(SCCと略す)の発生することは、これまで良く知られている。 このSCCは、温度の低い冷凍(‐34℃程度)では、温度の低いこともあり発生しないと、従来一部で信じられていた。このため、炭素鋼製冷凍液安タンクは、開放検査を行わなくても良い、との運用を行っている会社があった。 しかし、この認識は誤りである。実際に海外では、炭素鋼製の冷凍液安タンクで割れの発生事例が複数報告1)されている。 また、この冷凍液安のSCC抑制するためには、液安中の水分が0.2%程度ある方が良いとか、酸素は共存させないなどの対応策2)が知られている。合わせて、液安環境では溶接部の硬さが、ある一定値を超えると割れの発生すること3)も明らかにされている。このため冷凍液安タンクでも液安タンク製作時や補修時に溶接の施工管理を行うことや、必要に応じて応力除去焼鈍を行う対応が妥当である。 以上のように炭素鋼製タンクは冷凍液安であっても、SCC発生可能性があるとして、製作時の管理や運転中の環境制御、および定期的な開放検査での割れ発生の有無の必要がある。 なお、割れは突合せ溶接部等でも発生するが、溶接のための治具を固定するための溶接部跡4)でも発生する。このため、開放検査においては、治具溶接部の検査を行うことも必要である。
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装置材料の損傷・劣化「べからず集」Vol.12
2025.09.16
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せつびさんとカンリさんの「モノづくり品質の基本のキ」#6 良い仕事をするための基本~その4 QC7つ道具②
2025.09.12
指標でモノづくりを評価しよう! #6 故障件数
2025.09.12 無料会員
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2025.09.01
装置材料の損傷・劣化「べからず集」Vol.11
2025.09.01
第150回「オルガン講義 と 固有振動数」
2025.09.01
第6回 軸と軸受の力学(その3)
2025.09.01
サステナブルなモノづくりのために No.102
2025.09.01
からくり改善のための「機構学」入門 No.6 てこクランク機構(後編②:応用問題)
2025.09.01
指標でモノづくりを評価しよう! #5 労働生産性
2025.08.19 無料会員
ものづくり屋視点による労働衛生の実践 No.5 安全衛生のリスクアセスメントを再考する その2:共通プラットフォームを活かし有効なマネジメントに
2025.08.18