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装置材料の損傷・劣化「べからず集」Vol.37

2026.10.05

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ステンレス鋼の応力腐食割れ、塩化物イオンの濃度だけで決まると思うべからず

 ステンレス鋼が使用環境中で最も注意すべき損傷現象の一つが応力腐食割れ(Stress Corrosion Cracking、SCCと略す)である。SCCは、断面の割れ状況を写真に示すように、枝分かれのある割れが発生し、漏れや破壊に至る現象である。

写真 ステンレス鋼に発生した応力腐食割れの断面写真


 ステンレス鋼のSCC発生に、環境中の塩化物イオン(Cl⁻)の存在が重要であることがよく知られている。実際ステンレス鋼のSCCの多くは「塩化物SCC」である。
 ただ「ステンレス鋼使用環境に塩化物イオン濃度が高いと必ずSCCが発生する」とか、逆に「塩化物イオンの濃度が低ければSCCは発生しない」などの誤解されている場合がある。
 実際にステンレス鋼にSCCの発生するのは、冷却水環境のように中性もしくは弱アルカリ性の低濃度塩化物イオンを含む環境が多い。これらの環境でSCCが発生する条件は、溶液が、局部的に酸性の高濃度塩化物条件に変化する必要がある。その変化が起こるのは、ステンレス鋼に「すき間腐食」が発生するからである。すき間腐食は、ステンレス鋼にフランジ面のように構造的なすき間部や、ステンレス鋼表面にスケールやヘドロなどの付着物よるすき間が生じた部位で発生する。また、溶存酸素などの酸化剤の共存がすき間腐食発生の加速因子である。
 すなわち低濃度塩化物環境でのステンレス鋼のSCCは、すき間腐食発生なしには発生しない。このため、単に溶液中の塩化物イオン濃度に依存してSCCが発生する訳ではなく、すき間腐食が発生するか否かが、SCC発生の条件となる。具体的には、塩化物イオン濃度が例えば1000ppmを超える程度に高い場合でも、すき間が存在せずすき間腐食が生じなければSCCは発生せず、逆に塩化物イオン濃度が10ppm以下程度と低く場合でもすき間腐食が発生すればSCCは発生する可能性が高くなる。
 なお、ステンレス鋼の塩化物イオンに起因するSCCの発生の条件として、塩化物イオンやすき間の存在以外に、温度が一般に50℃以上で発生し、また部材に引張応力の負荷されていることが重要である。

図 ステンレス鋼の塩化物応力による応力腐食割れの発生条件

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