
「技術的質問へのAIの回答なんて?」と軽視すべからず
前回に引き続き、本連載のNo.18「ステンレス鋼管の2重管熱交、割れないと思うべからず」に関連し、私見を述べさせていただく。本稿の目的は、決して事故を起こした企業を追求するためではなく、事故防止のためのAIの活用について考えていただくためである。
先の事例について、あるAIに以下の質問をしてみた。なお、ステンレス鋼の種類や内部温度は公表されていないので、配管はSUS304製で内温80℃を仮定して質問した。
質問:80℃のSUS304ステンレス鋼製配管の内部の流体を冷却するために低濃度の塩化物イオンを含む中性の工業用水を管外面に流す2重管の設置を検討しています。ステンレス鋼製配管に損傷の発生する可能性があるでしょうか。もし可能性がある場合にどのような損傷が発生する可能性があり、その危険性はどの程度でしょうか。
AI回答:ご提示いただいたSUS304製ステンレス鋼配管(内管)と炭素鋼製配管(外管)の二重管構造において、内管内部に80℃の流体を流し、外面を塩化物イオン濃度30ppm程度の工業用水で冷却する条件は、ステンレス鋼の損傷メカニズムの観点から非常に警戒すべき環境です。この条件下で最も発生が懸念される損傷は塩化物応力腐食割れ(Cl-SCC)で極めて高いと評価されます。(冒頭部分のみ、以下略)
この回答は、実際に生じた現象とも一致しており、適切であると判断される。
もし設備の設計段階で設計者が、本件に関してAIチャットを行い、この結果を得ていたら図1に示す様に2重管の設置を思いとどまるか、損傷発生可能性の議論を組織内で開始することができたと考えられる。すなわち、事故を未然に防げた可能性が高い。

図1 AIに聞いていたら事故を未然に防げたのでは
もちろん全ての環境と材料の組み合わせで、既存のAIが適切な回答を与える保証はない。しかし、図2に示す様に現時点で常識的な評価を与えてくれるまでに回答性能が向上していると判断される。また、図3に示す様に、同じ質問を複数企業が提供する種々のAIに問いかけ、それらの回答を比較検証し、妥当な方向性を明確化していくことが必要であり、有効と考えられる。

図2 AIは実用レベルへ

図3 AI活用の3ステップ
AI活用の方法論や最終的に判断する人間にどのような資質が必要かなど、今後議論が必要である。しかし、現状でも判断の参考としてAIが役立つことは明白なので、技術検討の有力なツールとして活用を行っていくべきと考える。以上をまとめて図4に示す。

図4 総括図:技術的課題へのAI活用、軽視すべからず
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