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サステナブルなモノづくりのために No.115

2026.10.14

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わが国のものづくりの生き残る道とDX

 最近いろいろな所で、日本の製造業の生き残る道や、それとDXの関係を議論する機会がちょろちょろある。大学院で特定の分野の専門家を集めたオムニバスの講義を10年に1回位輪番で担当するのだが、今年ちょうどその順番が回ってきた。そこで、早稲田大学の藤本隆宏先生、東京大学の鈴木一人先生ほか、筆者が話を聞きたい、学生に話を聞かせたいと思う人にお願いして、「今後のものづくりはどうなるのか?」というテーマの講義を実施した。大変充実した内容であったし、いろいろなヒントを頂いた。学生がどこまで吸収できたかは若干謎であるが。それから、Mクニカの人と定期的に意見交換する場を持っていて、いろいろな話をする。
 もちろん、わが国のものづくりと言ったって、企業は様々であるし、そのものづくりも多様である。ステレオタイプ的に、日本のものづくり、中国の、米国の、と言っても仕方がないのであるが、そういう分類をするとなぜか安心する。これはどういう心理的な作用なのだろうか。今回は、上記講義の講師陣の議論、主に、藤本先生、やMクニカとの議論をベースにある種、受け売り的な話をさせて頂きたい。
 EV、半導体、人型ロボットなど、莫大な資本力と開発スピードが必要な分野で、日本のものづくりが勝てないどころか、ついて行けなくなってきているのは衆目の一致するところだと思う。中国の製造業の就業者数は3億人とも言われているのに対し、日本はせいぜい1,000万人ぐらいの中規模国であって、規模で勝てるわけがない。日本が得意なのは、中国も米国もやりたがらない、作るのが面倒臭いものづくりであるということをいろいろなところで聞く。かつての米国では労働力の主力は移民であり(今はどうなっているのだろう?)、欧州の場合は今もそうであろう。中国の場合は、農村部から都市部へ移動した労働者がものづくりの担い手の主力である。このような流動性の高い労働市場においては、とにかく企業は成長しなければならない。それはすなわち、投資に対して効率良く収益が上がるようなものづくりでなければならないそうだ。そうすると、ソフトウェアを多用した方が効率が良いであろうし、ハードウェアとしてはそこそこの品質で良い。逆に、高精度な工作機械や、すりあわせを多用するような高品質な自動車は割りに合わないという訳である。そういうところは日本のメーカーに任せて、自分達はもっと投資効率が高い、市場の大きいところで稼ぐから、よろしくね。という訳である。アメリカもこの傾向があるように思われる。
 面倒くさいものをつくるか、そうでないかで、中国的な製造業と住み分けができたとすると、日本の製造業はその範囲において、中規模国のものづくりをして生きて行くのであろう。そのような面倒臭いものづくりの領域は徐々に小さくなって行くような気もするが・・・。

 DXの進め方もこの話に大いに関係していると思っている。中国、米国におけるものづくりは、流動的な労働市場を前提としており、短期雇用、単能工、フォード生産方式的な分業が合理的になる。まさに、藤本先生のモジュラーの世界である。各業務にマニュアルが整備されていて、というか、マニュアルを整備することが第一のミッションであり、作業者はマニュアル以上のことは決してやらない。DXの導入に関しても、トップダウンに進められ、現場がどうこう言うことはなく、従う。業務はマニュアル化され形式知化されているので、システム導入はスムースに行われる。逆に言えば、形式知化された業務内容しかシステム化しないし、導入されたシステムに合わせて業務の方を変える。従って、DXがそこそこ上手く行くし、面倒臭くないものづくりであれば、これで充分役に立つという訳である。
 一方で、安定的な労働市場を前提とする日本型のものづくりは、終身雇用とは言わないまでも長期雇用が合理的であり、多能工化、チームワーク、トヨタ的なリーン生産方式で、常にカイゼンし続ける、藤本先生のすり合わせ型のものづくりが得意となる。だから、面倒臭いものが作れる。DXに際しては、トップが指示しても現場が納得しないと進まない。マニュアルは整備されていないか、かなり基本的なものしかなくて、仕事が忙しくてマニュアルを作る暇がないという言い訳が通用する。別の言い方をすると、現場にノウハウが溜まり、属人化する。つまり、業務が形式知化されていないし、業務範囲も明記できない。だからこそ現場が強くなり、チームワークがスムースに行く。システム導入に合わせて自分達の仕事のやり方を変えることは、相当な効果が期待できない限りしない。こういう状況において、米国流のDXは多分上手く行かない。Indutry4.0的なDXもどうなのだろうと思うが、今まで話を聞いている範囲では、結局、シーメンスやダッソー的な統合Indutry4.0システムというのは、形式知化できるところだけを扱っているだけなので、やっぱり、日本のものづくりに適用すると不満が出るのだと思う。

 自分で書いておきながら、様々な話の断片をつなぎ合わせていて、うさんくさい。例えば、現場作業の話とホワイトカラー的なエンジニアリング業務の区別をもっとつけなければいけないのかも知れない。と思いつつ、何となく、日本のDXの難しさの特徴が分かるような気になっている。だからこそ、ここは狙い目であって、従来のIndustry4.0的なアプローチでカバー出来ない部分をデジタル・トリプレットでやろう、と改めて思うわけである。

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