執筆者
ヤマハ発動機株式会社
製造技術統括部 PT鉄物技術部 クランク製技G
栗山 達也
論文要旨
モーターサイクルエンジン構成部品の組立式クランクシャフトは、基幹部品として自社で内製しており、その組立工程の製造ラインは人作業によって構成されている。
本稿では、ASEAN地域の人件費上昇に対応するため、省人化によるコストダウンを狙った自動化活動のキーアイテムとして、長年の課題であった「ハンド振れ修正作業」の抜本的な解決に向けた自動機開発の取組みを紹介する。
はじめに
世の中には、さまざまな用途のモーターサイクルが存在している。日常の足として使われるものの多くは、小排気量の単気筒エンジンを搭載しており、自社もASEANを含むアジア圏のモデルで多く採用している。クランクシャフトは一体式・組立式の2種に分類されるが、自社のアジア圏の生産拠点では安価に生産できる組立式クランクシャフトの生産が主流である。組立式クランクシャフトは、クランク・クランクピン・コンロッドなどいくつかの部品で構成されており、それぞれ圧入や溶接・ボルト締結で固定される(図表-1)。このような工程を踏み、完成品となるため、構成部品の寸法精度や圧入精度のばらつきの影響を受ける。このため、最終的に組立精度を調整する工程が必要になり、最終工程において完成した組立式クランクシャフトの振れを測定・修正する作業を行っている。
本論文では従来、人作業工程であった「振れ測定・修正工程」自動化に向けた工法開発について紹介する。

図表-1 エンジン内
組立式クランクシャフト、永遠の課題
2-1 組立による振れ精度悪化と修正作業
クランク・クランクピンを組付けする際、自社では圧入方式を採用しており、要求機能上、締まりばめで圧入されるため、弾性変形による歪みが発生する。また、プレスや治具の状態によっても出来栄えが左右され、結果として組立後、クランクシャフトの振れ精度が悪化する。このため、組立後にクランクシャフトASSYとして振れの測定基準と許容値が指示されている。
弊社における測定基準は、センター基準及び軸根元基準の2種類の指示が存在しているが、昨今はエンジン内での使い方を考慮した軸根元基準を標準的に指示している。また、振れ規格は0.05[mm]以下を指示しており、組立後、振れ精度が規格を満足しない場合は手作業でハンマリングを行い、修正作業を行っている(図表-2)。

図表-2 振れの測定基準とハンマリング作業
2-2 振れ修正は今も昔も手作業
振れ修正は「手作業」で行われており、自社の組立式クランクシャフトの生産拠点すべてで、その作業が標準工程として整備されている。その作業内容は正に職人技で、規格は定量化されているが、修正のプロセスは勘コツ作業そのものである。また、2-1で述べたように、組立後の振れ精度を保証する必要があるため、全数検査が必要となり、おおむね専属で1人工を要する作業となっている。さらに振れ修正は、長い作業習熟期間が必要であり、さまざまな課題を持った工程である。以下に振れ修正が抱える課題をP・Q・C・D・Sでまとめる。
振れ修正は、製造上の課題が多い工程で過去から改善を求められており、ECRS※視点で規格緩和、振れ抑制形状の作り込み・組立精度の向上・工法の変更など、今日までいくつもの対策を模索してきた歴史がある。
本件は未着手領域だった「C・R」に着目し、「振れ修正作業を自動化することで人から設備に代替(R)することで、生産性・品質・納期・安全衛生上の課題をクリアし、振れ修正の前後工程、すなわち組立式クランクシャフトの工程全体を自動化で結合(C)することで省人化を行い、コストダウンに繋げる」ことをテーマに、要となる振れ修正作業を自動化するための工法開発を行った。
※ECRS:業務改善を実視する上での、順番と視点を示したもの。Eliminate(排除)、Combine(結合と分離)、Rearrange(入替えと代替)、Simplify(簡素化)の英語の頭文字を頭文字をとった略称
振れ修正、自動化工法の開発と導入
3-1 作業者は何をやっている?
振れ修正作業には大きく分けて「測定・判定・修正」の3工程の作業があり、振れが規格内に修正されるまでこの作業を繰り返し行う(図表-3)。

図表-3 作業内容
工法開発の手始めとして、作業方法の分析を行い、作業要素を抽出、さらに作業を成立させるための構成要素まで細分化し、人から機械への置換方法を検討・検証することにした。また、作業には勘コツが含まれるため、分析段階でそれらを抽出、暗黙知を形式知化するための活動も合わせて行い、機械化のために検討が必要な項目を洗い出し、自動化手段を構築していった。実際に抽出した主な項目を下記に記載する。
①測定:ダイヤルゲージ付きの測定治具に置き、手動でワークを回転させ、振れ量と振れ方向を読み取る
(A)軸根元基準でワークを回転させる際、ワークを浮かせないように負荷をかけている。
(B)測定位置・基準位置が明確になっておらず、段取り等で治具を組み替える際、作業者によってばらつきが発生する。
②判定:読み取った振れ方向から傾向を判断し、修正する際の最適な位置・最適な力を勘コツで決める
(C)振れている位置から、振れ方をグルーピングし、分類している。
(D)グルーピングの結果と振れ量の情報を元に、経験則に従い、修正方向・修正力を決めている。
(E)修正し過ぎ・修正しきれないを判断して、フィードバックしている。
③修正:決定した内容でハンマリングする
(F)ハンマリング作業は、加圧というよりは衝撃による修正で振れを変位させている。
(G)作業者は、変位させたい量に対して、どの程度衝撃を加えれば良いかという考えで判断している。
3-2 測定のロジックと設備構成
手作業による測定は、測定治具、ダイヤルゲージ、ワークを駆動させる人の手、ダイヤルの目盛りを読む人の目、読んだ目盛りから振れ値・方向を計算する脳を構成要素として成り立っている。次項にそれぞれの要素に対して検証した内容と、自動化で採用した機構を紹介していく。
3-2-1 測定治具:既存の治具構成を踏襲
組立後のクランクシャフト製品図では、軸根元を基準として、軸端側で振れを保証するように指示されている。これはクランクシャフトがエンジンに搭載される姿勢が考慮されており、実際の動作状態における振れを保証することを目的としている。しかし、軸根元基準による測定の場合、V型の受け座にワークを置いて浮かないようにして回転させる必要があることと、機械化の際にワークをモーター等の駆動機に取り付けて回転させようとすると、駆動機中心にワークが寄せられ意図した軸中心で回転しなくなる恐れがあった。そのため、回転機械化の物理的な難易度を下げることができるセンター基準を加え、2パターンの基準で構造検証を行った。
① センター基準の検証
このパターンは、軸根元基準からセンター基準に置き換えることで、機械化する際の難易度を下げることを目的としている。ただし、センター基準と軸根元基準による差異を演算で換算する必要があるため、振れ測定用のセンサを軸端と軸根元にそれぞれ配置し、その測定結果から換算が可能かどうかの検証を行った。
検証の結果、軸根元基準での手測定との差は、N10のワーク検証を行って、振れ量差:最大0.013[mm]、振れ角度差:最大40[°]となった。差の主な原因は振れ角度の割出し精度であり、振れの測定に直動センサを使ったものの数値の読取りは人作業で行ったため、誤差が出てしまったと考えられる。
設備化した際には、読取りも自動化されるので差が少なくなることが予想できたが、差分を肯定して厳しい管理規格を設ける必要があり、軸根元基準での見通しが立たない場合のバックアッププランとすることにした。
② 軸根元基準の検証
軸根元基準の場合に重要となるのは、3-2-1冒頭で述べたように、ワークが浮かないこと・ワーク中心で回転させることの2点である。浮かせないという点に対しては、物理的に下方向に押さえ付けることで解決できるが、背反として押し力によって、ワークを傷付けてしまう恐れがあった。そのため、押さえ付けによる傷発生の可能性と、機械化する際の目安として傷を発生させる押し力の検証を行った。
また、手測定の場合のV受けは摩耗を懸念して高硬度材を採用しているが、傷発生のリスクが高いため、ベアリング(BRG)で受けるタイプの仕様も追加し、精度への影響と対擦過傷性を同時に評価した(図表-4)。

図表-4 ワークの受け方
検証の結果、手測定のV受けと同仕様を採用する場合、50[N]以上の押さえ力でワークに圧痕が発生することがわかり、機械化する際の要件として、安全率を考慮して30[N]付近を常用域にするという知見を得ることができた。また、BRGで受けるタイプは、対傷性にはかなり有利なものの、BRGの持つラジアル方向・アキシャル方向のクリアランスが測定精度に影響することが確認され、P4等級のアンギュラBRGを使って両側をBRGにすると0.008[mm]程度の振ればらつきが発生するため、採用を見送った。
③ 採用した方式
検証結果から、センター基準の場合は換算をしたとしても軸根元基準との差は発生してしまうことと、軸根元基準での懸念事項であるワークの浮き上がり防止は押し付け荷重30[N]付近を常用域にすることで、高硬度材の固定式であっても傷発生防止が可能なことがわかったため、今回は軸根元基準、V受けは高硬度材の固定式を採用することとした。残る課題であるワークを意図した軸中心で回転させる方法については後述する。
3-2-2 基幹となるセンサの選定とポイント
手測定では、目盛り0.001[mm]のダイヤルゲージを使用しており、製品規格は0.05[mm]であるので、振れ測定用のセンサとして採用する場合の要件として、公差幅の1/10以下の精度を保証できるセンサから選定を行った。セットアップの容易さ・海外拠点での入手性・イニシャルコストを考慮して直動センサのメーカー・仕様を選定した。直動センサの分解能は要件を満たしているため、直動センサをどうやって機械に組み込むかを重点的に検討した。
この点に関しては、手測定のダイヤルゲージが内包している問題を明るみに出すことで組込み方法を見出すという手段を取った。手測定の場合、機種段取りなどで治具にダイヤルゲージを取り付ける際、目方で調整を行っている。それはいくつかの問題を内包しており、いずれもμ代で誤差が出る可能性があるものの、製品規格レンジを考慮した際に影響は小さいという判断に基づいてこれまで問題視されることはなかった。
しかし、機械化した場合は、設備評価として基準となる手測定との比較を行う必要があり、かつ、段取り等の再現性確保も必要なため、下記のように手測定での課題を改善した仕様を織り込むこととなった(図表-5)。

図表-5 ポイントを抑えた設備設計
3-2-3 設備仕様への落し込み
最後の課題として、ワークを意図した軸中心で回転させる方法が残った。単純にワークをモーターに取り付けて駆動させてしまうと、モーター中心で回転してしまうため、この点を機械的な工夫で解決する必要があった。協力メーカーより、軸物ワークの歪み計測でフローティング式のチャックを導入した実績を紹介され、課題としている駆動方法の解決に繋がる可能性があると判断し、この方式をベースに開発を進めることとなった。
フローティング式チャックは、ワークの軸根元中心の回転を阻害しないように、駆動軸とワークを連結するチャック部に軸同士を連結する際に使われるカップリングのような役目を持たせており、具体的には、XY方向にクロスローラーBRGを配置し、重力や回転時の反力を相殺するため、45°刻みで低張力のバネで釣り合いを持たせたものとなっている(図表-6)。

図表-6 フローティング式チャックの構造
プロト仕様・量産向け仕様と段階的に作り込みを行い、最終的には、繰返し精度0.005[mm]以下・振れゼロマスターとの差異0.005[mm]以下の精度を出すことに成功した。
3-3 判定のロジック
手作業の場合、3-1で触れたように、作業者の脳の中で、振れ値・方向という入力に対して、どの位置をどの程度の力でハンマリングするか? という出力を導き出している。本件は、測定~修正までの一連の作業を機械化することが目的のため、どう修正するかを人間の脳に当たるPLCやPCで演算させる必要があり、このアルゴリズムを、熟練作業者への徹底的なヒアリング及び、TRY & Errorで構築していった。
3-3-1 徹底的なヒアリングとアルゴリズムの構築
本設備の開発に際して、開発メンバーに熟練作業者を迎え入れ、実際に振れ修正する際に何を考えているかのヒアリングを行うことからアルゴリズムの検討はスタートした。作業者は、主に「ワークの出来栄え」「修正の状況」の2つの情報から修正内容を決定しており、その概要を下記に示す。
① ワークの出来栄え
振れ量と、CR1、CR2の振れ方向に基づき、振れ方を、「ハの字」「逆ハの字」「ねじれ」+「複合型」の 4つに分類している。たとえば、「逆ハの字」の場合は、ピン圧入面付近をハンマリングすることになるので、より大きな力が必要等、傾向を見ながら判断している。演算での分類は可能だったものの、自動化における修正の強弱は分類からの算出とはしなかったため、演算には反映させないこととした。
② 修正の状況
作業者はその時々の「状況」を鑑みて修正内容を決定している。「状況」は振れ量・方向等の直接的ではない外乱を多く含み、多岐に渡る。そのため、熟練作業者に実際に手作業をしてもらいながら、徹底的に因子の洗い出しを行い、演算式を構成していった。演算化は、洗い出された因子をON/OFFで判定できるように計算式に変換し、条件フラグと言う形で条件分岐を構成した。実計算で使うパラメータは、作り込みを想定した共通パラメータと機種固有パラメータの2つの領域に分けて格納することにした(図表-7)。

図表-7 演算の概念
3-3-2 設備への実装
構築したアルゴリズムの成立性は、机上では判断できないため、実験段階・実機検証段階では、Excel関数で演算を組み、そこで得られた計算結果を、実験機器・設備に指令して検証を行う形で作り込みを行った。結果、条件分岐のしきい値となるパラメータの作り込み次第で修正回数は変わってくるものの、実際に出力された計算結果に基づき繰返し修正を行うと、規格を満足させることができ、有効性を確認することができた。
また、実機段階では、構築したアルゴリズム+修正方法に応じた出力(押し量mm、押し力N)が得られるように演算を改修し、設備へ実装した。
3-4 修正のロジックと設備構成
手作業ではハンマリングによる衝撃で修正を行っているが、機械化に際して、軸の歪み矯正等で活用されるプレスによる静荷重で修正する方式を採用した。本項では採用に至るまでの検証の過程を紹介する。
この方式の場合、既存の技術を転用することが可能なため、まずは市販の歪み矯正機の調査からスタートした。ただし、市販されている設備の価格帯を考えると、ASEAN領域に展開する場合、投資回収の観点で導入が難しくなることが予想されたので、技術を手の内化しつつ、専用機として安価に製作することを想定していた。
調査結果より、日本国内において大手メーカー数社で組立式クランクシャフトの歪み矯正機導入事例があり、静荷重による振れ修正採用実績があることが判明した。成立性を確認するためTRYした結果、プレスによる静荷重での振れ修正は可能であることを確認することができた。また、検証時に機械に求められる仕様として、下記項目を抽出し、社内検証及び設備開発時に作り込みを行うこととなった。
社内の実験機器を活用して検証を行い、社内開発の実現性・難易度・設備要件を判断していくこととなった。振れ測定に関しては、手作業で使っている治具をベースに、ダイヤルゲージを直動センサに置き換え、角度計測にロータリーエンコーダーを取り付けて、振れ量・角度をデジタルで出力できるようにした。また、ワークを押す手段としてサーボプレスと同等の制御が可能な引張圧縮試験機を選定し、専用のワーク受けを準備した。
まず、振れ修正に有効なワークの受け方を検証した。両端で受けてプレスで押してしまうと、左右のクランクが相互に影響してしまう、かつ、弾性変形によるスプリングバックの現象が顕著に出て、全くコントロールできる代物ではなかった。一方で、左右のクランクが相互に影響しにくいように、左クランク(CR1)をプレスする場合は左クランク(CR1)の軸端・右クランク(CR2)の軸根元側で受ける、右クランク(CR2)の場合はその逆で受けると各々のプレスを実施しても、相互に多少影響するものの押しストロークまた荷重と振れ変位量の相関が取れることがわかった。左右のクランクを、各々修正していくことで、コントローラブルに修正が可能な目処が立った(図表-8)。

図表-8 有効な支持方法
そこで、次に演算領域の検証として、振れ量に対して小さいストローク(弱い力)から徐々に大きなストロークに可変させていき、振れの変位、押しストロークの相関を取った。その結果が図表-9となる。

図表-9 振れの変位とストロークの関係
同一ワーク内、同一角度で押した場合、変位させたい量とストロークは線形に比例しており、どの角度でもほぼ同じ傾きとなっていることがわかった。ただし、線形近似で予測できるのは、振れの変位が始まって以降の領域であり、変位が始まるストロークは、ワークのばらつきと押す角度に因り大きく異なる。ワークのばらつきに関しては、弱い力で試験修正をさせてからのフィードバック、押す角度に関しては、位相ごとの強弱設定をすることで解決できると見通しを立てた。修正したい振れ量に対する押しストロークの計算は、線形近似式+式内の切片の数値を機種ごと・位相ごとで設定することと、3-3の判定ロジックで構築したアルゴリズムを組み合わせた演算で計算させ、実際にどれくらいの回数で修正作業が行えるかの検証を行った。
検証を行う中でいくつかのポイントを追加しながら演算パラメータの改善を行った結果、ワークのばらつきに関わらず、最終的には3~4回の範囲で修正ができるようになり、実用可能なレベルに達することができた。
検証の結果、①~⑤で求められる機械化の要求仕様に対して、各々の項目で実現可能性の高い具体的な手段を見出すことができたため、パイロット設備の実機開発ステージに移行した。
3-5 パイロット設備の製作・導入
機械化の目途が立ち、「量産向けパイロット設備の製作・パイロット拠点への量産織込み」の活動をスタートさせた。将来的なASEAN展開を想定して費用対効果・投資回収の観点で安価に設備を製作するため、海外製作を視野に入れた。さらに「有識者の知見を専用設計に反映させる必要があること」を両立させるため、設備設計や制御の作り込みは日本国内で実施し、パイロット拠点の国内で設備製作できるメーカーとタイアップして量産向け設備の製作を進めた。実際の設備製作の流れは、「設計:日本、ユニット製作:パイロット国、組付:日本、作り込み:日本」という形を取ることで、安価でかつ専用設計の設備製作を実現した。
協力メーカー及び、パイロット拠点の協力のもと、量産開発・製作・作り込みを経て、量産ラインに展開、生産でのランニング評価に漕ぎ付けることができた。次項でランニング評価状況と今後の見通しを紹介する。
導入状況と今後の課題
4-1 導入状況
2023年1月よりパイロット機は自社台湾工場で実稼働しており、設備の信頼度を評価するためにランニング生産を継続している。測定精度の評価では、手測定結果に対する差と判定結果の差の2点をモニタリングしている。また、修正精度は、直行率と言う指標を使って評価を行っている。製品規格0.05[mm]以下とは別に測定や量産のさまざまなばらつきを考慮して、管理規格を設けており、具体的には0.045[mm]以下を目標に自動修正させ、その時の「既定の修正回数内で修正できた数÷生産量」から直行率を算出し、モニタリングすることで修正精度の評価を行っている(図表-10)。

図表-10 モニタリング状況
モニタリングの結果、測定精度に関しては、稀に設備能力評価基準である手測定との差0.005[mm]を超えるものが発生する点、修正精度においては直行率にばらつきがあり、100[%]に満たない生産ロットが発生する点、また設備構成備品の早期消耗等、設備精度や運用面でいくつかの解決すべき課題が出てきた。
直行率の改善に関しては、前工程のワーク出来栄えばらつきの影響が大きく、少ない修正回数で規格に入れようとパラメータ調整を実施しても仕掛ロットに対する限定的で一時的な改善にしかならないため、入出力の傾向を任意の頻度でフィードバックする演算を追加導入することで解決した。
4-2 今後
ランニング生産による作り込みも佳境に入り、2024年8月現在、設備的な課題対策はおおむね完了し、工程全体の成熟度向上のため、量産実績に基づく良品判定規格や設備管理規格の適正化を行っている最中である。今後、ASEAN向けにパイロット設備で得られた知見をベースに量産型設備を仕立てていくことになるが、その時は、積極的にAIのような新しい技術を取り入れて、より良い設備が作れるように邁進していきたい。
おわりに「人に寄り添うエンジニアリング」
ランニング生産中、対策を織り込むために台湾のパイロット導入拠点を何度か訪問した。
改修のために稼働を停止させていたところ、作業者の方に「いつまで停めるんだ、早く使いたい」と言われたことがあった。設備を導入したことにより手作業のハンマリングから解放されており、肉体的負担が大きく減っていることから、「早く使いたい」と言ってきたそうだ。定量的な効果では表現されないが、本機導入の効果を大きく実感できた瞬間であった。顔には出さなかったが内心とても嬉しく、本論文の最後に記載させていただいた。製造現場に携わるエンジニアである以上、生産性やコストを追求するのはもちろんだが、このように人に寄り添った視点も大事だなと改めて感じた瞬間であった。
協賛
工法開発からパイロット機製作に御協力いただいた不二殿・バッシュモンベル殿・IVICE殿、並びにパイロット導入拠点で、現在も協業していただいている台湾山葉にも感謝の意を表する。
また、開発メンバー並びに熟練作業者として、本件に携わっていただいた元浜北工場 CR製技G 榛葉 賀津也氏の技術・技能に敬意を表したい。
TPM賞とは
TPMによって成果をあげている国内外の事業場や、設備管理技術の発展に寄与する優秀な論文・商品、個人の貢献等を審査・表彰する制度です。TPM賞には、5つの賞があります。

本記事では、設備管理技術に関するシステムの研究あるいは改善実績等の論文で、独創性、効果、汎用性に優れているものを表彰するTPM優秀論文賞を受賞された論文を紹介しています。
TPM賞について詳しくはこちら
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