
2025年度の連載「ものづくり屋視点による労働衛生の実践」では、主に有害物質に係る業務上疾病を防ぐ視点から解説したが、労働衛生の全体領域を語るならば、外せない分野を残してしまった。それが今回のテーマとなる人間工学であるが、「安全衛生管理活動における人間工学の位置付けと課題」として、次のとおり補足の機会を得たいと思う。
第1回:人間工学の2つの歴史的潮流(労働衛生管理活動の背景として)
第2回:労働と生産の必須要素である人間工学の課題と領域
第3回:TPMの源流の1つとされる科学的管理と労働衛生
折しも第1回の掲載となる7月は安全週間の実施月である。これを機に、安全衛生管理を振り返りとなれば幸いである。
人間工学の“語感”
1995年のことと記憶している。筆者が所属する工場でTPM展開のマスタープランを作成することになり、安全・衛生と環境管理活動の分担を指示されたのだが、この“語感”から想起される一般の課題認識に少々抵抗を覚えてしまった。
そもそも「身内の事業自得」(語弊はご容赦)である内部の安全衛生問題と、近隣から広域さらに地球全体に向かって貢献し、襟を正さなければならない環境問題が一括りにされている“粗雑な課題分類”が腑に落ちなかった。あるいは、すでに定式化されている安全衛生の諸活動を継続した結果として、「ゼロ災」や種々の基準などを満足することは(実際は容易ではないのだが)当り前過ぎて、生意気にも「TPM的な革新性」が感じられない。そんな思い上がった“感覚”だったのだと思う。半ば反射的に、①安全、②衛生(作業環境を含む)、③環境保全(外部)の3本柱に、④“Ergonomic Wellness”(生産に携わる仲間の人間工学的な快適性を追求したいという思い)を、“語感”のままに標榜として書き加えてしまった。
振り返れば、真摯に人間工学を学び取り組んでいる方々には申し訳ない限りであり、重ねて筆者自身当時は、マネジメントの対象とすべき課題とスローガンの区別も付いていなかった。発した言葉に責任ある意味付けもできないまま30年余、心に引っ掛かっていた。
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