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サステナブルなモノづくりのために No.109

2026.05.13

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生成AIの得意不得意(その2)

 前号で生成AIの話を書いたのだが、若干書き残しがあったので、少し続きを書かせてください。
 前回、リマニュファクチャリング設計ガイドラインを生成AIを使って導出する研究の話をしたが、これの続きである。これは、エコデザインに興味の無い設計者にできるだけ簡単にリマニュファクチャリング設計をやって貰うために、100個程度の汎用的なリマニュファクチャリング設計ガイドラインから、今、設計しようとしている製品にカスタマイズした設計ガイドラインを導出するというものである。入力は、汎用ガイドラインに加えて、製品の構造情報、リマニュファクチャリングの工程情報(どの部品を交換するか、どの部品は取り出してクリーニングしてもう一回取り付けるか、といった情報とその手順)を与えている。構造情報は部品のネットワークの形で一応構造化されているが、工程情報の方は基本、文字情報である。それでも設計者に有用な結果が出てくる。これは、メーカーの技術者に確認済みである。
 今回言いたかった1つ目は、当たり前と言えば当たり前なのだが、製品情報を違う製品にすれば、その製品にカスタマイズした設計ガイドラインがちゃんと出てくるし、汎用ガイドラインの方をリマニュファクチャリング設計じゃなくて、修理を容易にするリペア設計に変えれば、リペアのためのガイドラインが出てくる。いろいろな場面で使える汎用的なツールができたと喜んでいる。
 もう1つ面白いのは、この研究では、今や当たり前になったAIエージェントを使っているのだが、そうするとツールの使用ログが出ている。ここでのツールというのは、汎用設計ガイドライン、製品情報、工程情報のことであるが、AIエージェントがどのような順番で、どのツールを見て、どういう情報を獲得したかが分かる。これはまさに、AIエージェントの問題解決プロセスの情報なので、これを集めて、知識として再利用できるようにしてやれば、我々の研究室のもう一つのテーマである「デジタル・トリプレット」でやっていることに繋がってくる。ただ、これまでのデジタル・トリプレットでは、熟練者や未熟練者といった「人」を対象にして、作業の記録を取ったあとに、1つひとつの作業の意図をヒアリングすることで、意味のあるプロセス知識を記述してきた。AIエージェントからは意図を取り出すことはできないであろうから、そこは考えないと。そこにあるのは単なる選択確率なのだろう。さらに言えば、この作業プロセスをAIエージェントに指示すれば、ユーザの意図に対してさらに適合した結果が得られるはずである。多分これは可能だし、既にやられていることのように思われる。そうすると、デジタル・トリプレットとAIエージェントの話が繋がってくるのではないかと思っている。

 この、人が上手く操るAIについてもう1つ面白い話がある。マクニカのAさんという人と定期的に意見交換しているのだが、こんな話を聞いた。Aさんの仕事を正確には把握していないのだが、大雑把に言うとDXコンサルタントだと思う。Aさんの話によると、日本企業でのAI導入はなかなか上手く行かない。コンサルタントが入って、ガーと作業分析をして、その結果に基づいてAIを含むシステム開発をやって導入するのだが、導入した途端、その作業プロセスが固定化されてしまい、状況の変化に対応できず、結局そこで進歩が止まって、そのうちそのシステムは捨てられてしまう。結果として、DXの効果が大して現れない、ということだそうである。この辺が、我々のデジタル・トリプレットの常に進化し続ける仕組みを持たなければいけないという話と重なって、お互い話が合うのである。
 さてそのAさんが教えてくれたAIの導入事例というのがある。それは在庫管理システム、在庫品の需要を読んで、足りなくなりそうになったら発注するシステム、であって、いかにもAIで上手く行きそうな作業である。ところが、どうしても上手く行かない。散々作業分析をしてわかったのは、1つのAIで処理させようとするのではなく、長納期部品を扱うAIエージェント、汎用品のAIエージェント、特殊部品のAIエージェントなど複数のエージェントを配置して仕事をやらせると途端に上手く回るようになったという話である。ここで面白いのは、ある問題に対して、どういうエージェントを設定して組み合わせるかというところは設計問題であって、人の知の入る余地がある、別の言い方をするとコンサルタントのビジネスチャンスがあるという点である。これも問題が上手く切り出せてしまったら(ここにこの話のイノベーションがあるのだが)、分担作業設計AIエージェントが上手く処理してしまうのであろうか・・・。
 この話のもう一つ面白いところは、この在庫管理AIエージェントシステムが稼働してからは、それぞれのエージェントの働きぶりをチェックし、褒めたり、アドバイスしたりすることが人の仕事になったということであった。ここに進化し続ける仕組みが入っているし、人が役割を果たす余地もあるところが良い。
 蛇足ながら、Aさんが言うことはいろいろ面白くて、例えば、欧米は、Visionを見せれば動く。上の命令に従う。将来のROIを考えて行動するのに対して、日本は、実際に効果を見せないと動かない。合意を得て、ボトムアップにしか動かない。今のROIしか考えられないというのがある。だからどうしても後手後手になるという訳である。AIの世界は本当にもの凄いスピードで変化するので、先行き不安です。

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