

グローバル企業では、最適なSCM(Supply Chain Management)の実現に、TPM(Total Productive Maintenance:全員参加の生産保全)を活用することが多くなっています。それは、設備ロスを愚直に追求するTPMが基盤強化の強い武器であるからです。本稿では、3回にわたってTPMとSCMの関連性と実際の成果事例を説明します。
サプライチェーンの安定性と競争力の鍵は“設備”にある
モノづくりを取り巻く環境は、グローバル化、需要の多様化、環境規制の強化などにより、かつてないほど複雑化しています。こうした中で、企業の競争力を左右するのは、サプライチェーンの「安定性」と「柔軟性」です。調達から生産、物流、販売までの一連の流れが滞りなく機能することが、納期順守(D)、品質保証(Q)、最適なコスト(C)を実現するための前提条件となります。
とくに、サプライチェーンは国境や域内を超えてグローバル化が加速しており、そこにはさまざまなリスクが存在し、ときには大きなハザードをもたらします。具体的には、新型コロナウイルスの感染拡大のころ、サプライチェーンが大きく寸断されたことが記憶に新しいことと思います(図表―1)。

図表―1 新型コロナウイルスの感染拡大を受けたサプライチェーン寸断の一例
(通商白書2020、経済産業省より引用)
こうした事態を避けるためにも、サプライチェーン全体を俯瞰することが重要です。たとえば、自動車産業の品質マネジメント規格であるIATF:16949でも、サプライチェーン全体を範囲として規定し、全体最適の重要性を強調しています。
また、日々のモノづくりにおけるサプライチェーンの脆弱ポイントは「生産設備」です。設備の故障や停止は、生産計画を妨げ、納期遅延や品質不良、さらには機会損失を引き起こします。これらの問題は、単なる現場のトラブルにとどまらず、サプライチェーン全体に波及し、企業の信頼や収益に大きな影響を与えかねません。
このような問題に対して、TPMとSCMの連携が、持続可能な競争力を生み出す鍵となります。TPMは設備の安定稼働を支える仕組みであり、SCMは供給網全体の最適化を目指すマネジメント手法です。両者が連携することで、サプライチェーンの強靭化と経営への貢献が可能となります。
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