
RMFJ株式会社
久藤 樹
出光興産株式会社にて潤滑管理業務に従事後、現在はRMFジャパン株式会社テクニカルコンサルタントとしてセミナーやコンサルタントを実施している。
資格:技術士(総合技術監理部門、機械部門)
機械状態監視技術者(振動カテゴリーⅢ・トライボロジーⅢ)
著書:「基礎から学ぶ潤滑管理」(潤滑通信社)
「一から学ぶ工業潤滑剤」(日刊工業新聞社)
今回は、作動油による省エネルギーについて紹介します。
図1は、作動油による省エネルギーの取組を示しています。射出成型機の油圧装置で、冬場に正常なサイクルタイムになるまでに暖気運転を60分しています。作動油で、暖気運転時間を短くし、正常運転時の消費電力を低減する方法を考えます。

図1 作動油による省エネルギーの取り組み
油圧システムのエネルギー損失
1.1 油圧システムの各部のエネルギー損失
図2は、ポンプに入力されたエネルギー収支を示したものです。
ポンプに入力されたエネルギーは、油の粘性抵抗や金属と金属や金属とゴムの摩擦抵抗によりエネルギーが消費されます。一般的に最終的に有効に使用されるエネルギーは40%程度になります。

図2 油圧システムのエネルギー損失
(1)ポンプでは、金属と金属の摩擦による損出を低減する摩擦調整剤の添加と低温による粘度
アップによる吸込み抵抗を低減するための高粘度指数化が求められます。
(2)油圧装置の配管部でのエネルギーロスは、作動油の粘性抵抗です。粘性抵抗を低減るために
作動油の低粘度化が求められます。
(3)アクチェターのシリンダー部では、シール部での金属とゴム材の摩擦抵抗がエネルギー損出
になります。そのため、金属とゴムとの摩擦低減が必要になります。
(4)上記(1)(2)(3)から作動油からの省エネ対応は、低粘度化、低密度化、高粘度指数化、
低摩擦化です。
①低粘度化により、潤滑性の低下が懸念されますので耐摩耗性添加剤を配合します。
②低密度化には、低密度のベースオイルを使用します。
③高粘度指数化については、高分子ポリマーの配合により、粘度指数を向上します。
④低摩擦化には、摩擦調整剤、油性剤を配合して摩擦係数を低下させます。
(5)低粘度化での留意点
ポンフ゜の軸入力動力をLSポンフ゜の軸出力動力をLPとすると
ポンプ全効率 η=LP/LS となります。
また、ポンプ全効率 ηは、機械効率 ηmと容積効率 ηvとすると全効率η =ηm×ηvです。
容積効率ηvは、ηv=実際の吐出量÷理論吐出量です。
容積効率を向上するためには、実際の吐出量を多くする必要があります。そのためにポンプ
内部の漏れを少なくする必要があります。ポンプの内部漏れは、粘度が低いと多くなります
ので適切な粘度選定も重要になります。
1.2 油圧回路の配管抵抗の計算
図3は、油圧回路の配管抵抗を求める計算式を示しています。

図3 油圧回路の配管抵抗の計算
①配管損失を式で表すと下記の式になります。
ΔP=λ×(u2 γ)/2g×L/D
ΔP:配管損失(kg/cm2) λ:管摩擦係数 D:管内径(cm)
u:管内平均流速 (cm/sec) γ:作動油の密度 (kg/cm3)
g:重力加速度 (980cm/sec) L:直管相当配管長さ(cm)
②層流の場合、管摩擦計数λ=64/Re(DV/ν)になりますので、式を変形すると下記の式のよう
になります。
ΔP=(32u/g×L/D2)×γ×ν γ:密度 ν:粘度
③つまり、配管損失は、作動油の密度と粘度に比例します。
作動油の面からは、低密度・低粘度の油を使うことで、配管抵抗を減らすことができ、
省エネになります。
1.3 ウォミングアップ時間の短縮
(1)一般作動油と省エネ作動油の粘度温度線図
図4は、縦軸に粘度を横軸に温度を取った粘度温度線図です。

図4 省エネ作動油(高分子ポリマー添加)
①粘度指数向上剤添加油は、無添加油と比較すると粘度温度線図の傾きは、緩やかに
なります。
②粘度指数向上剤は、分子量が5,000~100万の高分子ポリマーです。
③高分子ポリマーは、長い糸ミミズのようなもと考えることが出来ます。
④低温では、糸ミミズの糸が糸マリ状に凝集しますので、抵抗が小さくなり、粘度が
下ります。
⑤高温では、糸マリの糸がほぐれた状態になり、抵抗が増加し、粘度を上げるように
働きます。
⑥つまり、粘度指数向上剤は、低温で粘度を下げ、高温で粘度を上げる働きをします。
(2)具体的に考えると例えば
①無添加油と粘度指数向上剤を添加した省エネ油の40℃の粘度が46cStで同じです。
②一方、10℃の粘度は、無添加油は、267cStですが、粘度指数向上剤添加油は、
209cStです。
③例えば、ポンプの使用適正粘度範囲が20~220cStだとすると無添加油を適正粘度で、
使用するためには若干の暖気運転が必要になります。
④粘度指数添加油は、無添加油と比較すると適正な使用温度範囲は広くなりますので、
暖気運転の必要は無くなります。
ところで、A油もB油も@40℃の粘度は同じなので、40℃では省エネにならないと考えられますが、粘度指数向上剤は常温でも省エネ効果があります。
(3)高分子ポリマーの常温での効果
高分子ポリマーの常温での効果を考えます。図5は、縦軸に粘度を横軸にせん断速度を取っています。

図5 高分子ポリマー添加の常温での効果
①油圧ポンプでのせん断速度は大きくありませんが、制御弁はクリアランスが小さくせん断
速度が大きくなります。
②油がせん断速度の小さい油圧ポンプを流れる時は、ポリマーは膨らんでいますが、せん断
速度の大きい制御弁を流れる時は、ポリマーは、流れの方向に配列して粘性抵抗を減らす
ように働きます。
③ポンプ部では粘度を維持し、内部リークの抑制、潤滑性を保持する効果を発揮します。
制御部では低粘度化し、エネルギー損失を低減します。従って、常温でもエネルギー損失
を低減します。
この記事は、会員専用記事です。
会員になると、会員専用の記事もお読みいただけます。