エコデザインの普及?

今年4月に政府から「循環経済行動計画」が発表されるなど(これについてはまた後日取り上げます)、政府も産業界もサーキュラー・エコノミー(CE)の推進に邁進している感がある。ホルムズ海峡の件もあり、経済安全保障に向けた資源確保の側面が強く、そうすると材料のリサイクルが前面に出てきてしまう。CEの本質は、前回紹介したAbsolute Sustainabilityであり、エコデザインが重要な役割を担う。言うまでもなく、リサイクル性を高めるためには、リサイクル性設計が必要であるし、メンテナンス、リペア、リマニュファクチャリングなどを活用したCEコマース促進のためにも重要である。
このエコデザインをどのように普及させるか、底上げするか、というのが悩ましい。EUでは、エコデザイン規則(ESPR、Ecodesign for Sustainable Products Regulation)があって、強制力を持って進めている。わが国の方は、今年4月から施行された改正資源有効利用促進法で柱の1つとして「環境配慮設計の促進」を掲げている。具体的には、環境配慮設計した製品の認定制度を作って、認定製品は表示したり、グリーン購入で優遇したり、その他の支援を行うということになっている。エコデザインを普及させるために、EUのように強制力を使うのか、わが国のように自主性に任せ、奨励するというスタンスを取れば良いのか難しいところである。法律で強制するとなると、わが国の場合は(EUとは違って)必要最低限のレベルになるであろうし、それを頻繁に更新するということにもなりそうにないし、奨励するスタンスで上手く行くならそれに越したことはない。ただ、その中身が甚だ心許ない。というのが今回の主題である。
EUの場合、Joint Research CentreというEUの研究機関があって、相当、エコデザインに関する情報収集をやっているし、EU圏内の様々な研究機関が製品カテゴリー毎のエコデザインのルールづくりに参画しており、層が厚く、知を結集してこれからのエコデザインの姿を描こうとしているように見える。わが国での想定されるやり方は、業界団体が作っている環境配慮設計のガイドラインを認定して、それをクリアしている製品を認定することになりそうだ。プラ新法(プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律)でも同じやり方をした。このときは、お手盛りの業界団体の基準で良いのか疑問だったものの、プラスチックのリサイクル性設計はこれまでさほどやられてこなかったので、これから作るのだしまあ良いかと思った。
しかし、CEに関してこれは全然ダメだと思う。業界団体が作っている環境配慮設計のガイドラインというのは、1990年代に作るのが流行った「製品アセスメントガイドライン」のことだと思われる。JEITA(電子情報技術産業協会)にも家製協(家電製品協会)にもある。何と経産省で、「業界団体の製品アセスメントガイドライン」としてまとめられている。これは3Rの時代にまとめられたもので、CEとはパラダイムが違うのだから時代錯誤も甚だしい(書いているうちに段々腹が立ってきた)。例えば、家製協の「製品アセスメントマニュアル」は、初版が1991年発行で、最新の第5版が2014年の発行である。CE前夜である。これを使って、CEの環境配慮設計の認定しようというのはちゃんちゃらおかしい。前述のようにEUが叡智を結集してこれからのエコデザインのルールを作ろうとしているのに。
仮にわが国で「製品アセスメントガイドライン」を使ってエコデザインを普及、底上げするならば、最低限やらなければいけないことは大きく言うと1つ、分けると2つしかない。
大きく言うと、設計する製品のライフサイクルの現実をしっかりみて、それが循環するように製品設計することである。
分けるとまずは、現状の製品ライフサイクルを把握した上で、どのような循環にしたいのかというTo-beを具体的に描くこと。そしてそこから必要な設計項目を洗い出すことである。製品アセスメントガイドラインにはやれば環境によい設計項目が数多くリストアップされている。長寿命部品を使え、リサイクルし易い構造にせよ、使用する素材の量を減らせ、修理し易い設計にせよ、・・・といった具合である。全てを満たす製品設計なんてできないし、互いにトレードオフの関係にある設計項目も数多くある。つまり、ライフサイクルのTo-beを具体的に描くことは、必要のない設計項目を捨てて、本当に必要な設計項目に注力することを意味する。使い捨て製品に長寿命化設計なんていらない。この取捨選択をやらないから、まともなエコデザインの事例が出てこない。
もう一つは、エコデザインを実効性のあるものにすることである。設計は製造前の時点で「可能性」を製品に埋め込んでいるに過ぎない。それをライフサイクルの後半で活かさないと意味がない。メンテナンスし易い設計は、その製品をメンテナンスする時点で初めて効果を発揮する。リサイクル設計だって、その製品がリサイクルされるときの工程にマッチしたものでないと全く意味がない。このようにエコデザインの実効性を担保するようなライフサイクルの管理がエコデザインとセットで必須である。EUのESPRにはこの考え方がしっかり書いてあるし、話題のDPP(デジタル製品パスポート)だって、このエコデザインの実効性を担保するための道具の1つである。
これらをやらないと、CE時代の産業競争力に結び付かず、形だけやったことにするということになってしまわないか危惧している。3RとCEの違い、それから、設計について役人は全然分からないのでしょうかねぇ。
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