
事例や対応策情報、他社との共有避けるべからず
設備の事故や事例に関する情報、およびそれらの防止策などの情報を学協会での会議や講演会で紹介し、他社とそれらの情報を共有することに消極的な姿勢が多く見られる。もちろん、事例情報公開が法的な責任に関与する場合や、生産に関する秘密項目に該当する場合は、公表を避ける必要がある。しかし、それらに該当しない事例等の情報およびそれらの抑制策なども、一律に共有化しない方針をとられている会社や個人が多いのではないだろうか。
事例等の情報共有化ができないと、各社内で適切な対応が採られなかったり、同種の事例が繰り返されたりする可能性が高くなる。更に言えば、業界としての経験が共有化されないことで技術力の低下を招くことや、場合によっては業界の社会的信頼性の低下や法規制の強化につながる場合すら想定される。
事例やその防止策を他社と共有し、解析や対策の妥当性を専門的に議論して、現象の真の機構解明や対策の妥当性を検証することは、合理で信頼性の高い判断を行う上で重要と考えられる。また、共有化された事例情報が、各社での事例発生を抑制するために有用となる場合が多い。
多く事例を収集し共有することにより、現象の発生条件やそれらを抑制するための方法が、体系的に明らかにできる場合もある。例えば水素侵食に対するネルソン線図1)などはその好例である。更にAIが技術的な判断に活用されるようになりつつある現状では、どれだけの数の事例情報をAIのソースデータとて蓄積したかが、その判断の適否や価値を左右することになる。
このためには、各社と情報を共有化して議論する場に参加することや、もしその場がない場合は、その場づくりに参画することが必要である。合わせて、共有化された事例等の情報を社内で有効に活用する仕組みづくりや、その実施、継続も重要な課題である。
著者としては、事例等の情報の会社の枠を超えた共有化は、社会人として当然の責務であり、また相互の技術力向上および技術伝承の機会となり重要と考える。実際に、個別にJIPM、石油連盟、石油化学工業協会および腐食防食学会では、保安事故や特定分野にて情報共有の試みが行われた活動や、現状も継続されている活動がある。
今後この種の活動が、各産業分野で更に活発になり、また、収集された事例情報の業界内や社内での活用・普及方法も含めて共有化やAIのソースデータとされ、産業界の技術レベルや競争力の向上、更には経済的で安心、安全な産業界の維持、向上に繋がることを期待したい。
参考資料
1)API Recommended practice 941、Steels for Hydrogen Service at Elevated Temperatures and Pressures in Petroleum Refineries and Petrochemical Plans, API

図 事例情報共有化の課題と展望
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