
製造業を取り巻くグローバル競争は日々激化しており、価格や設備だけでは優位性を維持するのが難しくなっています。そんな中、真の競争力を生み出すのは高度な技術を持つ「人」です。計画的かつ体系的な人材育成が、企業の成長と競争力向上の要となります。本記事では、その一例をご紹介します。
包装材メーカーA社の精緻な人材育成計画
包装材メーカーA社では改善活動推進において、人材の育成と能力向上を重要な要素と位置付けています。とくに同社が展開する人材育成計画は、その綿密さと実践的なアプローチに特徴があります。
①スキルギャップとスキルマップの作成
従業員の現在のスキルと、工場が求める理想のスキルを明確にし、その差をスキルギャップとして定義します。そしてスキルマップとして整理します(図表―1)。

図表―1 スキルマップ(例)
これにより、個々の従業員の能力と組織全体のニーズを把握し、両者の間に存在するギャップが見える化されます。このプロセスは、TPMにおけるロスの見える化に発想を得ていると思われます。
②ギャップの損失金額換算と優先順位付け
TPMではまず工場全体のロスをリスト化し、そのロスを損失金額に換算します。この企業ではさらに、損失金額にスキルギャップがどの程度影響を与えているかを算出し、その分をスキルギャップによる損失金額、としています。
このようにスキルギャップというロスを損失金額換算することによって、工場全体として解消すべきスキルギャップの重要度と緊急性が明確になり、実施すべき教育の優先順位付けがなされます。これにより、教育投資が具体的な業績向上に直結するよう設計されています。
③教育計画の作成と実施
上記で特定され、優先順位付けされたスキルギャップを埋めるため、具体的かつ実践的な「教育計画」が策定され、実行に移されます。この計画は、単なる知識伝達に留まらず、実際の業務で役立つ能力の習得を目指します。

図表―2 スキルギャップを用いた人材育成計画
教育の費用対効果
スキルのギャップを損失金額に換算するという手法は非常にユニークです。これにより、これまであいまいだった教育目標や効果を明確にできます。各企業では教育・訓練、人材育成は重要であるという認識はあるものの、いまいち費用対効果が不明確になりがちです。その結果、いくらまで費用をかけて教育をするのかという判断が難しい側面があります。
今回紹介したスキルギャップの損失金額換算が、それらに対し参考となれば幸いです。
※本記事のお問い合わせは、JIPM・調査研究チームまで rd@jipm.or.jp
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