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装置材料の損傷・劣化「べからず集」Vol.23

2026.03.04

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生産技術基盤、おろそかにすべからず

 本連載のNo.18「ステンレス鋼管の2重管熱交、割れないと思うべからず」に関連して、筆者の疑問や提言を何回に分けて紹介させていただく。本稿の目的は、化学プラントでの事故事例を他山の石とするためであり、決して事故を起こした企業を追求するためではないことをご理解いただきたい。また、以下の疑問等は、公表されている報道を基に考えており、事実と異なることがあるかも知れず、その点はご了承いただきたい。
 第一の疑問は、「設備を設計もしくは施工した現場担当者が、工業用水を流す2重管熱交のステンレス鋼製本管の運転中に応力腐食割れが発生することを予見できなかったか?」ということである。
 経験を積んだ設計者や材料技術の専門家であれば、この設備は運転中の応力腐食割れ発生の可能性を想定できた、もしくは現場担当者でも当該設備は何らかの材料損傷の発生可能性があるのではないかと気づき、疑問を提起することは可能であったと考える。もし、予見されるか、疑問が提起されて検討が深められていたら、本件2重管の設置にあたり冷却方式を変えるとか、材料を変更するなど適切な損傷防止策の策定、実施が可能となったと思われる。
 しかし、何故予見や疑問提起がされなかったのか。その原因の一つとして、当該設備を設計もしくは施工した現場担当者が、図に青い矢印で示す様に、設備を構造物として問題無い強度や品質で納期までに製作することだと限定的に認識したのではないだろうか。すなわち、図の赤い矢印で示した設備の運転中の損傷発生可能性や、更に損傷が生じた場合のリスクを想定することは自分の職責でないと認識していたか、もしくはそれらを予見する推測する能力が十分でなかった可能性が考えられる。
 確かに、個人で図に示す各能力をあるレベルで保持することは不可能かも知れない。その場合は、組織として設備の信頼性を確保する仕組みづくりが必要である。それについては、次回の連載で考える。
 私としては、現場技術者に設計や施工する設備の使用環境での損傷発生の可能性の推測能力や、自らの業務のリスク評価の基礎的技術力は、各担当者が保持する必要があると考える。個人の技術者として、それらの能力が十分でないとしても、判断に迷う場合は上席者や専門家に疑問を提起することは、最低限必要と考える。これらは、化学産業に携わる技術者の基盤となる技術力であり、それを技術者みずからの職責と捉えて研鑽することや、企業としては技術者の教育、支援することが必須である。
 なお、産業やプロセスの種類により基盤となる生産技術は異なるので、それぞれの産業やプロセスに応じて必須とすべき生産基盤技術の明確化やその能力の確保が必要である。

図 化学設備の設計・製作担当者が具備すべき基盤技術のイメージ

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