

はじめに
労働衛生という言葉に出会ったことがあるだろうか。50人以上の事業場では衛生管理者の選任が義務付けられているので関係者ならば分かると思う。ならば、TPM8本柱の活動の中ではどこに含まれるのだろう。「安全・衛生・環境に決まってる」と言われるかもしれないが、試しに、「TPM」「労働衛生」で検索してみてほしい。筆者がトライした限りでは8本柱、安全・衛生・環境までは出てくるが、「労働衛生」という言葉は見付からない。
筆者はTPMが好きだ。労働衛生は「予防保全」だと思っている。結果だけを追うのではなく、設計とプロセスを重視し、モニタリング結果により、是正・改善をねらうからだ。しかし「安全」には微妙に違和感を覚える。罰当りな物言いかもしれないが、言い訳をさせてもらえるならば2つある。
1つは、半世紀近く安全衛生関係の仕事に関わってきて、残念ながら「安全第一」というだれもが否定できない文言を拝しながら「理論的ではないモノ・コト」に、しばしば遭遇したことによる。年齢を重ねて考えてみれば、「安全」という文言から想起される領域や文化的背景が、広く深いために生じる(良く言えば)多様性の反映なのかとも思われるが、少なくともTPM8本柱に明記されているのだから、予防保全的な方法論として深堀りされるべき課題がありそうだ。
2つ目は、労働衛生という分野や課題が理解されにくいのか、「安全」や「環境」の中に埋もれ混同されることに対する僻みと思っていただいて構わない。
筆者は現在、労働安全衛生法第81条第2項に規定される労働衛生コンサルタントとして、働く仲間の現場と関わりをもっている。僻みを重ねるならば、労働安全コンサルタントは同条第1項(先に)にあり、別のカテゴリーであるので、「一緒くた」にして欲しくないし、互いに登録分野以外の診断や指導を行うことはできない。
今回の寄稿の依頼は、当初安全衛生についてであったのだが、わがままを受け入れてもらい、労働衛生に“偏って”TPM同志諸兄に語らせていただくことにした。依頼者とは「同床異夢」かもしれない不安を抱きつつも、話題提供させていただきたいと思う。
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