装置材料の損傷・劣化「べからず集」Vol.9

2025.08.01

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「乾燥塩素ガスや酸素ガス、チタン製装置で取り扱うべからず」

 工業用純チタン(以下チタンとする)は、それ自体反応性の高い金属であるが、多くの環境中で表面に不働態皮膜と言う薄くて耐食性の優れた皮膜が生ずることにより、皮膜の安定な環境で優れた耐食性を示す。しかし、特定の環境では、不働態皮膜が不安定になり機械的な損傷等を受けたりすると、環境と著しい速度での反応、すなわち「発火」に至る場合がある。
 チタンに発火の生ずる可能性のある環境としては、以下の3種が知られている。
乾燥塩素
酸素
発煙硝酸
 塩素に関して水分を含む湿性塩素では、発火は抑制される。すなわち水分が発火の抑制材になることが知られている。
 酸素ガス中での発火に関する試験結果の例を図1) に示す。実際には、この図で示したより低温、低圧側の環境でも、発火の可能性があるとさている。
 上記3種の環境でのチタンの採用は、原則避ける必要がある。また、これ以外にも以下の2つの条件がそろう場合は、チタンの発火の可能性も残される。
酸化性が強い
水分濃度が低いか共存しない
 ガス環境での酸化性は、水溶液中での酸化性で検討する。
 このため、これに該当する環境でチタンを採用する場合は、慎重な検討が必要である。

図 酸素ガス中でのチタンの発火試験結果の例1)

参考文献
(1)F. E. Littman, F. M. Church, E. M. Kinderman, Journal of the Less Common Metals, Vol.3, Issue 5, P.367(1961)

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