
400℃以上で炭素鋼の長期間使用、注意怠るべからず
400℃以上で炭素鋼や低合金鋼を10年以上の長期間使用すると、図に模式的に示す様に経時的に「炭化物球状化」1)が発生・進行し、強度低下が生ずる。
炭素鋼は、同図中の初期に示す様に縞状に示すパーライト組織で、鉄と炭素の化合物が層状に分布することにより、強度を発現している。その層状の炭素鋼中の炭化物が、400℃以上程度の長期間の使用で、徐々に球状に変化し、材料としての強度の低下する現象が「炭化物球状化」である。強度の低下速度は、金属組織により異なり、温度が高いほど早い傾向がある。
また、炭素鋼や0.5%モリブデン鋼は、400℃以上の長期使用で、炭化物球状化と異なり「黒鉛化」2)と言って、鉄の炭化物が炭素(黒鉛)と鉄に分解し、強度の低下する現象の生ずる場合もある。
炭素鋼に応力が負荷されていない場合に問題が顕在化しないが、自重を含めて応力が負荷されて場合は炭化物球状化もしくは黒鉛化の発生により、規格で規定されている最低強度を下回る段階に至ると、装置の膨れ、座屈や破壊に至る場合がある。
このため400℃以上で炭素鋼や低合金鋼を長期間使用している場合は、炭化物球状化や黒鉛化の発生を監視しつつ使用する必要がある。
炭化物球状化の発生や進行を非破壊的に監視する方法としては、金属表面にてスンプ法を用いた組織観察実施や、部材の硬さを定期的に測定することが挙げられる。硬さから材料の強度が推定3)できるので、使用材料の推定強度が規格値の下限を下回った場合は、設備の更新を検討する必要がある。また、黒鉛化は、溶接熱影響部や母材部で局在化して発生する2)ことがあるので、現場での組織観察は、溶接熱影響部を中心に行う必要がある。

図 炭素鋼の炭化物球状化による組織変化と強度低下の模式図
参考文献
(1) 中原正大、「事例に学ぶ 化学プラントの材料損傷とその制御」、アマゾン、P.137、(2024)
(2) (1)のP.139
(3) (1)のP.161
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