計画保全の【羅針盤】1・2 「網羅性」「メリハリ対応」

2025.06.16

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 公益社団法人_日本メンテナンス協会が、強く推進している「計画保全」の考え方は、モノづくり企業の足腰の強化と同時に、経営に直結した保全の重要性を謳っている。
 「計画保全」を推進するとき、推進したいとき、人の心の中に秘めた“楔”が、継続性の駆動力となり、組織の推進力となり得ると筆者は考える。
 それでは、“秘めた楔”に成り得るものとは何か? それは胸に突き刺さり続ける“言葉”だ。人間は誰でも、“あの時の言葉は心に響いた”との経験があるだろう。グサッと心に刺さった言葉は、いつまでも心に“楔”のように残り続ける。
 それでは、「計画保全」を成功に導くための「キーワード10個」を、あなたに進呈しよう。きっと、あなたの羅針盤となるであろう。

羅針盤その1 「網羅性」

 「計画保全」を強く推進する上で、深く且つ強く且つ常に、心に刻みながら行動したい言葉は、何だろうか。筆者が最初に思い浮かぶ言葉は「網羅性」だ。

 “設備がモノを作り、その設備を維持するのは人です”と、装置産業界では常識のように言われる。計画保全を推進する上で、対象となる“設備”に対し、設備を維持する“人”に対し、それらどちらに対しても「網羅性」は重要なキーワードとなる。

 対応の些細な不徹底から端を発した重篤なトラブル例を、筆者は数多く見てきた。網羅性の観点から逸脱した「抜け」がもたらしたものだ。計画保全の考え方そのものが、「網羅性の担保」「抜けの防止」にあり、「計画保全」推進の重要性たる所以と言える。

 設備だけではない。限りある人財を、複数人同じ担当として配置することは現実的に難しい。そのためメンバー全員の技術力が、一定レベル以上にあることが保全メンバーは求められる。人に対しても、網羅性の観点での対応が必要となる。保全人財育成の重要性が声高に言われる所以だ。

 設備に対しても、人に対しても、「網羅性」を常に意識したい。

●重要参考テキスト
・『MOSMS実践ガイド』(P14:網羅性、p89:保全対象、日本プラントメンテナンス協会)
・「計画保全士養成コーステキスト」(p32:保全対象、P116:網羅性、日本プラントメンテナンス協会)

羅針盤その2 「メリハリ対応」

 「計画保全」では、「網羅性」と同時に「メリハリ」を重視している。

 網羅した機器全てに対し、全力投球することは現実的ではない。人・時間・費用には限りがある。では、この“限りある貴重な資源”を、いかにして的確に配分・配置するか。そのための、いわゆる「メリハリ対応」が必要となる。

 「計画保全」では、いの一番に『「機器リスト」を作成しましょう。その次に、「保全すべき対象設備を明確にしましょう」、さらにその次に「重要度評価」を行い、保全すべき対象機器をランク付けしましょう』と教えられる。それでは、「メリハリ対応」をどのように行うのか。

 それは、機器全てを一律に横並びにするのではなく、重みを付け差別化するのだ。高い点数が付けられた機器を、重要度の高い機器と位置づけし、保全にかける技術・労力・費用を重点配分するのである。
 「計画保全」では、定量的な重み付けが推奨されている。数値で重み付けすることは、関係者の合意が必要であり、見える化に繋がり、変更する場合もわかり易い。よく考えられた仕組みだ。

 品質に対する顧客要求度が高くなった、稼働率が低下した、環境に関わるステークホルダーからの要求が厳しくなったなど、我々の守っている装置に変化はなくとも、これら周辺事情に対応し、機器の重要度を変更する必要が時にはある。推奨している仕組みは、的確にこの変化に対応できる。
 気分屋や声の大きいメンバーの一声に左右されない、技術的で冷静な対応が、この仕組みで継続出来得るのだ。

 適格な「メリハリ対応」を意識した「仕組み」を構築し、この「仕組み」に従い行動しよう。

●重要参考テキスト
・『MOSMS実践ガイド』(p100:重要度ランク付け、日本プラントメンテナンス協会)
・「計画保全士養成コーステキスト」(p36:重要度ランク付け、日本プラントメンテナンス協会)

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