

RMFジャパン株式会社
久藤 樹
出光興産株式会社にて潤滑管理業務に従事後、現在はRMFジャパン株式会社テクニカルコンサルタントとしてセミナーやコンサルタントを実施している。
資格:技術士(総合技術監理部門、機械部門)
機械状態監視技術者(振動カテゴリーⅢ・トライボロジーⅢ)
著書:「基礎から学ぶ潤滑管理」(潤滑通信社)
「一から学ぶ工業潤滑剤」(日刊工業新聞社)
【質問です】
流体潤滑のすべり軸受において、回転数を5倍にすると油膜厚さはどのように変化しますか?
回答は、本文中にあります。
粘度とは
潤滑油の性状は、機械に使用する潤滑油を選定するための重要な要素となります。特に、潤滑油の粘度は、潤滑油選定の最も重要な特性です。
潤滑油にはサラサラしたものとネバネハとしたものがあります。水のようにサラサラしているものを粘度が低いと言います。水飴のようにネバネバしているものを粘度が高いと言います。「ねばさ」や「サラサラさ」を数値で表したものが粘度です。図1のように機械の種類や運転条件に応じて適正な粘度の潤滑油を選定します。
①粘度が高いと…大きな圧力でも油膜が切れず、潤滑効果を示しますが、粘性抵抗が大きくなります。
②粘度が低いと抵抗は小さくなりますが、低すぎると油膜が切れ、潤滑不良になります。
③高速回転の機械には、粘性抵抗の小さい低粘度の潤滑油を使用します。高荷重の機械には、大きな圧力でも油膜が切れず、潤滑効果のある高粘度の潤滑油を使用します。

図1 潤滑油の粘度とは
(1)粘度の定義
図2のように平行な二平面があって、その間に粘性のある流体(潤滑油)が存在して、下面は静止し、上面は下面と平行に速度Uで運動していると考えます。二面間の流れを層流とすると平面間の流速分布は(a)のように直線になります。なお、この時の流体の内部を(b)のような二面に平行薄い層の積み重ねと考えると流体に生ずる抵抗力は、これらの層をせん断する時の摩擦抵抗になります。二面の面積をA、運動速度をU、平面の間隔をhとすると流体の粘性によって発生する抵抗力Fは、速度と面積に比例し、
F=η(AU/h) となります。
単位あたりの摩擦力をτ(=F/A)とすると、τは垂直方向の速度勾配du/dyに比例し、τ=η(du/dy)と表わされます。この式の比例定数ηが絶対粘度になります。あるいは単に粘度と呼びます。
粘度のSI単位は、Pasで、工学単位のP(ポアズ、1P=0.1Pa・s)とその1/100のcP(センチポアズ、1cP=0.01P=1mPa・s)も用いられます。1P=1.02×10-6kgf・s/cm2です。
また、粘度ηを密度ρで割った値を動粘度と呼びます。動粘度のSI単位はmm2/sで、St(ストークス、1St=10-4m2/s)とその1/100のcSt(センチストークス、1cSt=0.01St=1 mm2/s)も用いられます。
表1に、主な液体の絶対粘度を示します。水の絶対粘度は、1cPで、軽油の絶対粘度は2cPです。潤滑油の絶対粘度は、2~1,500cpです。

図2 粘度の定義(絶対粘度)
表1 主な液体の絶対粘度

(2)潤滑油の粘度の測定
通常は、絶対粘度ではなく動粘度を測定します。図3にキャノン・フェンスケ粘度計による動粘度の測定法を示します。
①まず、ガラス管の上の線以上に油を吸い上げます。それから油を落下させます。
②油面が上の線から下の線まで油が落下する時間を計測します。
③粘度の低い油は、さっと流れますが、ネバネバした粘度の大きい油は落下する時間が長くなります。
④粘度と落下時間(時間)の関係は、
η=(π・R4・g h)×t/ 8 Q’ L-(B/t)
で表されます。 つまり、粘度は油の落下速度(時間)に比例します。
⑤測定される粘度は、動粘度です。動粘度は、絶対粘度を密度で割ったものです。単位は、mm2/sです。一般的には、cStが使用されます。

図3 毛管粘度計による粘度測定
(3)潤滑油の粘度表示
工業用潤滑油の粘度は、ISO粘度分類が使用されます。ISO粘度分類は、40℃の粘度で規定しており、単位はcStです。図4に 粘度グレード対照表を示します。
①粘度グレードは、2~3、200までの20グレードに分類されています。
②作動油の商品名のダフニースーパーハイドロ32Aの32という数字は、40℃の粘度を示しています。
③自動車用の潤滑油は、SAE粘度分類で表示されます。
④従来、汎用的に使用されていた60スピンドル油、90タービン油、120マシン油の60や90、120数字は、レッドウッド秒で表わされる数字です。レッドウッド秒は、液体50ccが流出するに要した秒数をもって粘度を表します。

図4 粘度グレード対照表
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