bool(true)

第152回「切れたネット回線 と 緊急対応の方針」

2025.11.12

icon X icon Line icon Facebook icon Printer
DX・デジタル一覧に戻る

緊急のトラブルシューティング

 みなさんは自分の専門的能力をフルに発揮している、限界まで力を使っていると感じるのはどんなシーンでしょうか。しばしば締め切り寸前にもそういう状況になりますが、私が明確に意識するのは、インフラ的に普段使っているものに技術的なトラブルが起きたときの緊急対処です。
 さほど頻繁に起きることではありませんが、たとえば、サービスを提供してるサーバが壊れた、ソフトウエアをアップデートしたら何かが正しく動かなくなった、今必要な加工機に故障が起きた、などなど。普段起きない想定・想定外に例外的に起こるので、対処マニュアルがあるわけではなく、可能性は認識していても具体的に考えていたわけでもなく、あるいは当初は認識していても、安定して動いているうちにすっかりその危険性を忘れてしまうことも。
 先日、我が家の光回線がダウンしました。昼間は職場で仕事できますが、週末には家で作業することも常態化しており影響が大きく、子供ら大好きYoutubeやら見逃し配信やらネットへの依存性が高いので、重大案件です。事前にネット不通の報は受けていたので、帰宅後すぐに機器類の再起動などの定番は試しましたが復旧せず、本格的な障害分析に移行しました。
 定番の、あるいは可能性を想定して対応が予めマニュアル化されていたようなケースを除くと、障害対応の基本は問題の切り分け、どこが正常でどこが異常かの分析です。各機器のステータスLEDには違和感なく、ケーブルの交換などでも変化はありません。いわゆる「ネットが使えない」という場合に、DNS(~.com などの人が読めるアドレスをネットワーク上の数値のアドレスに変換する仕組み)の不具合の場合もあって、その設定変更なども試しましたが改善せず。家内部のネットには異常は見られず、外にだけつながりません。念のため、スマホの回線経由(テザリング)で大学に一度行き、大学側からの家のサーバへの接続を試みるもやはり不可。
 回線はおおまかには、NTTによる光ファイバの物的接続および基本となる通信と、プロバイダ業者による情報の接続からなるので、これらを疑いました。こちら側では光ファイバの信号接続には問題ないという表示なので、電話局側を疑いましたが、工事故障の情報ページを見ても直接該当しそうなものはありません。ここまでで、プロバイダ内でなにか接続の認証などに不具合が起きて情報的につながらないのでは、と考えて、状況説明を添えて問い合わせを出しました。
 NTTにはプロバイダを介さずにアクセスできる確認用サイトがあることを思い出して試したのですが、そもそもこれもつながりませんでした。そこには故障が疑われる箇所として、家側で光ファイバに接続する装置(ONU)が挙げられており、申し込めばすぐに交換品を送ります、という記述が。
 結論はこの故障でした。一見すると光ファイバで回線がつながっている表示でしたが、装置内のどこかで通信が通らなかったようです。この装置は2005年製で、我が家に回線引いたときから20年間、東日本大震災の停電で数日止まった以外はほぼずっと動いていたことを考えると、よく頑張ったとも。全体的にケースは黄ばみ、発熱箇所はさらに色が変わっており随分前から気になっていましたが。
 2日後に送られてきた機器と交換しようとしたらまた課題が。いまどきは壁にファイバの差込口があって、そこからファイバケーブルでつなぐ方式が一般らしいのですが、黎明期に設置したためか、壁から出ているケーブルの被覆を剥いた、それこそ髪の毛のようなファイバが機器内部で巻かれ、接続されていました。折れたらおしまいという緊張感とともに接続し直して無事に復活しました。
 結果的には復旧まで2日かかったのですが、NTTへの申し込みまではノンストップ、とにかく復旧優先でした。問い合わせるにしても、一般には早く問い合わせるほど回答は早く得られるでしょうし、一方で「動きません」みたいな雑な報告では解決にもつながらないので、状況分析は必要です(が、それに対する回答が「ルータの電源を入れ直して下さい」でがっかりしたのは、また別の話)。

例外的事態への対処方針

 そのほかにも、サーバや仕事のメインで使うPCの電源が壊れて、普段あまり使っていないPCから臨時で移植して復活させたり、何らかの理由で急に起動から10分くらいしか動かなくなったPCからどの順番で重要データを吸い出すかという対応をしたり、様々なトラブル対応を経験してきました。
 最近では、「洗濯機から水が漏れている」という重大案件も(パッキンの調達方法からDIY交換手順まで急ぎ確認しましたが、パッキンの掃除だけで済みました)。多くの場合は、時間との闘いで、かつ「なにを犠牲にして何を優先するか」「どんなリスクを負って解決の可能性を得るのか」という判断がしばしば伴います。そんなにそうそう経験はしたくはありませんが、普段からの対象への理解・情報収集能力・経験・慎重さと大胆さなどの総合力が必要になるので、大事にならない程度・緊急ではないようなトラブルへの対処を様々に経験するしかないとは思います。
 自分自身の苦境だけではなく、周囲で起きたことも参考になります。報道経由でしか知り得ませんが、大手企業のランサムウエアによるダウンの事件なども、もし、あれが自分のところで起きたら、どう対応するか、と考えるきっかけにすべきです。
 あわせて、これらの対処事例に共通することとして、私自身に決定権があった範囲ということが挙げられます。自分の責任で判断して作業できるからこそ、マニュアルにない処置、リスクを負うこと、場合によっては切り捨てることもできます。これが組織としてのものだと簡単ではなく、対処方法を思いついても上長の判断を(場合によってはかなり上まで)仰ぐ必要がありますし、その面倒さから関わるのをためらうかもしれません。時間との勝負な状況では、それが悪化させる可能性は十分にあります。
 この観点では、現場に近いところになるべく判断権限を委譲しておくこと(緊急時に拡大する)と、責任は上の方でカバーすること、を日頃から定めておいたほうがよさそうです。ドラマなどで、中間管理職な上司が「責任はオレが取る!やれることは何でもやれ!」みたいなシーンがありますが、あれは現実にも十分あり得るとおもいます。ただし、本来はああいう見せ場ではなく、普段からその体制を準備しておくべきでしょう。
 そのほか、学内の自身の肩書きによる判断としては不適切な対応(やりすぎな行動)でも、自身の経験からは問題解決に有効な手段と判断、という自己矛盾に陥ることがあります。プレイイングマネージャーは、プレイヤーとマネージャーで判断が食い違うことがあるわけです。その場合に「(立場関係なく)一教員として勝手にやります」と宣言して実行することがあるのですが、このような場合に世の中一般ではどう解決されているのかは気になるところです。
 緊急トラブルはそうそう遭遇したくはありませんが、一通り決着すると、自分の能力の確認とともに、また新しい経験を得られたという感覚は残るので、わずかにはプラスの要素もあるかと思っています。

この記事は、会員専用記事です。

有料会員になると、会員限定の有料記事もお読みいただけます。

DX・デジタル一覧に戻る