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猛暑が続く日本の夏。気温は30度を超え、湿度も高く、屋外だけでなく屋内でも熱中症のリスクが高まっている。2025年6月、労働安全衛生規則が改正され、一定の条件下での職場における熱中症対策が義務化された。これは単なる制度変更ではなく、働く人々の命と健康を守るための、社会全体の意識改革の一歩である。私たちはこの新しいルールのもと、どのように熱中症と向き合っていけばよいのか? 今回は当初の予定を変更して特別企画を掲載する。
今さら? なぜ? 熱中症対策なのか
すでに1ヶ月以上前のことであるが、主要メディアにより「6月1日より熱中症対策が、罰則付きで義務付け強化された」との報道があり、折しも全国安全週間の準備月間に重なったこともあるのか、私の事務所にも追加の講演依頼が舞い込んできた。この原稿の執筆中にも、大手経済週刊誌に法務担当記者による関連記事があり、「罰則付き義務化」はやはり“つかみ”として用いられていた(最後まで読むと、流石に正論であると感服したのではあるが)。
法規制については、労働安全衛生規則(以下、安衛則と略記)改正の公布が4月15日、施行の6月1日まで、わずか1ヶ月半という“米価対策にも劣らぬ異例のスピード”である。
図表ー1は、「職場でおこる熱中症/職場における熱中症による死傷者数の推移1):厚労省」からの作図である。直近10年間の人/年を折れ線グラフで示した(目盛:第2縦軸)。これによると、2024年は1257人の死傷があったとされる。グラフからは割愛したが内数として31人の死亡が記録され、3年連続で30名以上となった。行政を初め関係者が強い危機感を抱いた理由の1つである。

図表ー1 年間猛暑日数と熱中症による死傷者数(気象庁および厚労省データより筆者作図)
よもやとは思ったのだが、気象庁による年間猛暑日(35℃以上)日数2)を棒グラフで重ねてみた(目盛:第1縦軸)。気象庁の観測記録は1910年から115年分が開示されており、当初10年の平均日数に対して、直近10年のそれは13倍に増大している。そしてその10年間の推移は、職場での熱中症死傷者数と強い相関を示しており、もはや明確な因果関係があろうことを疑う余地はない。
内訳はリンク先1)を参照願うが、直近5年(2020~2024)では、猛暑の影響を最も受けやすいであろう建設業の20%を筆頭に、製造業、運送業と続き、警備業を含めて64%の死傷者を記録しており、中でも50歳以上の中高年齢者では6割を超えている。
猛暑を警告する日々の気象情報に、早急に対応すべきことは(例えも暑く)火を見るよりも明らか。今年も記録を更新しつつその夏に突入している。
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