
本稿が掲載されるころには、第64回 設備管理全国大会は閉幕しているはずだ。漠然とした閉塞感によるものなのか、「TPM活動は時代遅れ」という声も聞かれなくはない中で、次世代技術、スピード、人材育成、DX、環境負荷、…等々、真剣な討議があったものと思う。
さように次世代TPMのあり方が検討されはじめてから十余年を経過しているはずだが、安全衛生はどうだろう。8本柱の同じ括りにあり、課題が山積する“環境”の陰にあって”、「ゼロ災のために(各々の感覚で)頑張り続ける」ところに留まってはいないだろうか。
人の不注意を排除する安全確保から、人を尊重する価値観への変遷
連載第6回(2025年9月)で、労働衛生週間に関する“スローガン”と“国による労働災害防止計画”の推移を取り上げてみたが、後者について第1次(1958年~)から第14次(2023年~)にわたる当該計画の重点課題とキーワードを図表―1に再整理してみた。大きくは、
・Phase1:労働安全衛生法以前
・Phase2:再発防止対策と水平展開
・Phase3:マネジメントシステム導入
・Phase4:マネジメントシステム活用
の“4段階”に区分できると思われる。

図表―1 労働災害防止計画のキーワードからみる「方法論の進化」
Phase1は、「労働者の作業行動の欠陥に起因する災害防止が重要だから、安全教育を徹底する。そのねらいは貴重な労働力の損耗防止と、関係する経済的損失の除去というものだった。
Phase2の労働安全衛生法の成立とともに、科学的方法論が整い始める。TPMが提唱された時期にも重なり、設備管理では「故障に学び再発を防止せよ(PM分析を含む)」と教わった。災害防止もまさにこの予防哲学と同軌にあったと思う。
Phase3はISO 9000や14000の時代に当たり、安全衛生も戦術(≒個別対策の積み重ね)から戦略(≒マネジメントシステム)へと変遷をとげる。
Phase4では、技術や化学物質開発の猛スピードに、事例に学ぶ活動では追随できなくなってきたため、情報公開と有効なリスクアセスメントが求められるに至る。一方で、価値観は、働く人の多様性や生き方を尊重する方向へ進化し、組織には、法令遵守のみならず、自主的活動と高いモラルが求められるようになった。驚くべき変遷である。
では、“TPMに記述されている安全衛生”はどうだろう。活動の評価(安全衛生)に例示1)されているKPIは災害件数などの実績(≒過去形)で、KAIは、ヒヤリハット件数、パトロール指摘件数の類にとどまる。はたして、的を射たものだろうか。ものづくりの大前提課題と活動に対して、必要十分な示唆を産業界に提供していると言えるだろうか。
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