
製造の現場では多くの問題が発生
製造の現場では、日々、次のような問題やトラブルを抱えながらモノづくりを行っており、多くの問題が発生しています。
① 設備の劣化:設備の清掃や点検、給油が不十分なため、汚れや摩耗が急速に進行し、故障やチョコ停(設備の短時間の
停止)が頻発する原因となります。
② 品質不良:設備の清掃や点検不足、あるいは設備故障や不具合の影響により、製品の品質不良が発生し、顧客クレーム
を招くことがあります。
例えば、金属の切削時に発生する切粉を放置していると、新たにワークを設置する際に治具と干渉し、加工不良の原因
となったり、刃具やワークに切粉がこびり付き、傷になるなどの現象がこれに該当します。
③ 異常の見逃し:オペレーターが設備の異常に早く気づかず、故障が重大化し、生産ライン全体が停止したり、事故・災
害の発生につながります。
④ 納期遅延:設備故障や不具合の影響により、生産ラインの停止や作り直しなどが発生し、納期遅延につながります。
また、このような納期遅延が起こらないように、本来必要のない在庫を多く抱えることが常態化しています。

自主保全とは何か
設備の故障や不具合、事故を未然に防ぎ、設備の安定稼働を実現するためには、設備の近くで作業をするオペレーターが、設備を正しく操作するとともに、設備の日常点検や部品交換、簡単な復元等を行うことが求められます。このような活動を「自主保全」と呼びます。 オペレーターが「自主保全」に取り組むことで、設備の状態を常に把握し、問題が発生する前に対処できるようになり、故障や不良、事故などを未然防止できるようになるのです。
製造と保全の役割分担とは
この自主保全を、製造と保全の役割分担という視点から捉え直してみましょう。
保全活動は、大きく「劣化を防ぐ活動」「劣化を測る活動」「劣化を復元する活動」の3つ に分かれます。

図表ー1 製造と保全の役割分担
製造部門が担当する保全の活動は、おもに「① 劣化を防ぐ活動」です。製造部門が「① 劣化を防ぐ活動を」進めることで、保全部門は、「① 劣化を防ぐ活動」に多くの時間を取られないで済むようになり、専門的な知識を要する「② 劣化を測る活動」「③ 劣化を復元する活動」に力を集中できるようになります。
また保全活動は、その手段分類から、表のように「事後保全」「予防保全」「改良保全」 「保全予防」に分けることができます。

図表ー2 保全の分類と自主保全の範囲
製造部門においては「予防保全」の中の「日常保全」(清掃・給油・増締め・日常点検等)がもっとも重要な活動です。こうした活動は、保全部門の限られたメンバーだけでは範囲が広すぎて手が届かないため、設備の近くにいるオペレーターが行ってこそ効果が期待できます。
また、「定期点検」「整備(部品の取替えなど)」「故障や不具合の迅速な連絡」「突発修理の支援」などについては、保全部門からの教育や支援を受けながら、活動を進めることが重要です。表にある、製造の分担の○印が付いた活動が「自主保全」の範囲となります。
製造部門と保全部門が互いに協力し合うことにより、効率的な保全体制を実現することができます。
次回、「自主保全」のススメ~自分の設備は自分で守る~②に続きます。
*日本プラントメンテナンス協会では、生産分野において日本最大級の資格である「自主保全士認定制度」を提供しており、過去に23万人を超える自主保全士が誕生しています。