
執筆者
ヤマハ発動機株式会社
プラントエンジニアリング部環境企画グループ
大野 渉
論文要旨
昨今、脱炭素社会の実現に向けた取組みが強化されている。2020年には日本政府が2050年カーボンニュートラル実現を宣言した。このような中、当社は海外を含む自社工場において、2035年までにカーボンニュートラルを達成する目標を掲げた。その実現に向けてエネルギーの「最少化」と「クリーン化」の2つの取組みを進めている。
最重点取組みに位置付ける、エネルギーの「最少化」では、製品の形質変化に必要不可欠なエネルギーのみを「価値」と定義し、「価値」以外をすべて「改善余地」とするヤマハ独自の「理論値エナジー」手法を展開している。
本稿では、「理論値エナジー」取組みにより、加工設備における価値エネルギーを追求し、従来比49%の省エネルギーを実現した事例とその成果を記す。
今回生み出した改善手法は、汎用性が高く、当社のグローバル全体で4,000台超の設備に適用できる。その削減ポテンシャルは加工工程全体の15%に届く。
本手法の横展開により、当社の加工工程におけるCN取組みは目標に大きく近づく。
はじめに
昨今、地球温暖化への関心の高まりから脱炭素社会の実現に向けた取組みが国際的に強化されている。2020年10月には菅首相の所信表明演説で2050年カーボンニュートラル実現が宣言され、それに向けた企業の取組みが始まっている。この動きに対し、当社は海外を含む自社工場における2035年カーボンニュートラル(CN)を宣言し、エネルギーの「最少化」と「クリーン化」の取組みを始めている。
当社はCN実現には、投入エネルギー量を減らす事が重要と考えており、「最少化」を最重点取組みと位置付けている。この「最少化」の2035年目標は2019年比39%減、年率3%であり、省エネ法の年1%を大きく上回る高い目標である。この実現のカギが、理論値生産から派生した「理論値エナジー」手法であり、ここでは製品の形質変化に必要なエネルギーを「価値」と置き、それ以外はすべて「改善余地」として捉え、エネルギーの最少化を目指している。
本稿では「理論値エナジー」の考え方に基づき、実際に加工設備における価値エネルギーを追求した事例と成果を記す。
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