
技術判断の階層化、おこたるべからず
前回に引き続き、本連載のNo.18「ステンレス鋼管の2重管熱交、割れないと思うべからず」に関連し、疑問と提言を述べさせていただく。再掲するが、本稿の目的は化学プラントでの事故事例を他山の石とするためであり、決して事故を起こした企業を追求するためではないことをご理解いただきたい。また、以下の疑問は、公表されている報道を基に考えており、事実と異なることがあるかも知れず、その点はご了承いただきたい。
本件に関する疑問の一つは、「2重管の設置の判断に職責者や安全担当者などの複数による多重的、多面的な確認および承認は機能したのか?」ということである。
基本的に設備の設置や改造は、現場担当者が実務を行うが、職責者、専門家、安全当者、そして決裁者等の審議、承認を得て実施される。本件の場合に、これらの「判断の階層化」が機能していたのであろうか。
判断の階層化は、一般にリスク評価を基に図のaに示す様に階層数や審議の深度が決定される。そう考えると、本件の2重管設置は、リスク評価で低リスクと判断され、図のbに示す様に判断の階層化がなされなかったのであろうか。もしくは、本件に関してリスク評価は行われておらず、危険性をはらむ設備として検討対象と認識されていなかったのであろうか。
いずれにしても、報道されている本事案の結果影響の大きさから考えて、プロセス流体の漏洩が生じた場合のリスクは甚大であり、判断の階層化は判断の品質を確保する上で必須であったと考えられる。
対応としては、リスクの高い設備においては、その設備規模の大小に関わらず、階層数を増やして、徹底的な審議の上に承認、実施することが必要である。その際に、材料技術やリスク評価の専門家の関与することが必須と考えられる。
そのためにも、危険源のある化学企業では、リスク評価や材料技術の専門家や専門組織の設置が必要であり、また、それらの専門家が階層化された判断の構成員として関与する仕組みづくりが重要と考える。

図 チーズなモデルを基に事故防止(判断の階層化)の模式図
(補足:チーズモデルとは、ランダムに穴の開いたチーズの様に、各階層には不備はあることを前提に、判断の正確性を高め危険源が事故とし
て顕在化する確率を低減させるために、判断の階層を増やすことや、各階層の有効性を高めることの必要性を模式的に示している)
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