
ついに解明したオルガン自動演奏装置
今回の話は25年7月号の続きです(第148回「古いメカトリ?機の解析 と 正負の圧力」)。 当時は共同研究として始まったところだったのでボカしていましたが、大学に残されていた約100年前のパイプオルガンの自動演奏装置の解析調査をしていました。
ことの発端は、少し前に学内で100本を越える巻物が再発見されたことです。オルガンの自動演奏のためのデータ媒体で、それを再生していた自動演奏装置も礼拝堂の片隅に残っていました。大学オルガニストの先生を中心に、資料保存の専門家、私のような工学系など分野をまたいだチームで、巻物の保管と演奏装置の調査の共同研究を行いました。メカトロ系の私はその演奏装置の技術的調査を担当しました。
この自動演奏装置は、幅約300[mm]のロール紙に穴が打ってある演奏データ(オルガンロール:ピアノ用はピアノロールと呼ばれていた)をセットすると、人間の代わりにオルガンを演奏します。穴は133列、推定で40~50[mm/s]の速度で、その穴の有無からオルガンを操作します。
オルガン本体は失われているのですが、演奏台(コンソール)も残っていて、鍵盤は手で操作する鍵盤が61鍵で2段、足で操作する鍵盤が32鍵、音色を切り替えるストップという操作系が約25あることが確認できました。オルガンは、鍵盤から、音を出すためにパイプに空気を送り込む制御をするバルブのある風箱まで、主に何で操作を伝えるかで「メカニカル:機械式、」「エレクトリカル:電気式」「ニューマチック:空気式」があります。
「機械式」は鍵盤から機械的リンクが風箱のバルブに繋がり、「電気式」は鍵盤にスイッチ・バルブに電磁石で電気配線、「空気式」は鍵盤に小型バルブ・パイプでつないだ先の仕組みで風箱バルブの開閉をします。本学に今ある3台のパイプオルガンは「機械式」で、鍵盤裏には膨大な数のリンクが並びますが、今回の調査対象である昔のオルガンは「電気式」でした。
オルガンの操作は基本的にはデジタル、オンオフしかありません(強弱のようなアナログがない)。オルガン本体には電磁石が多数あり、それに通電すると、各部が動作したと推定され、演奏台はスイッチや接点のかたまりで、操作信号を出していました。自動演奏装置は演奏台と並列つなぎで、代わりに信号を出すことでロールを元に演奏していました。
昨年の5~7月に何度も礼拝堂に通って、機能推定しながら配線をたどり、最近、不明点を解消しました。部材の劣化が激しく、修復や動作試験は不可能ですが、外見と電気的調査でほぼ特定できたとみています。
その中で使われていた穴センサとリレーに共通して見慣れない特徴がありました。出力端子が複数(6~12本)あって、「オン」すると、その端子が全てコモン(グランド、基準電位)に繋がります。今日の一般的な市販リレーではオン・オフ・切り替えの接点が1・2・4回路入ったような部品ですし、産業用センサで近い物はオープンコレクタ(オープンドレイン)出力ですが、出力は1本しかありません。回路を読み取る過程で、これがこの装置の回路の大きな特徴であることが分かりました。
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