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「自主保全」のススメ~近年の自主保全の取組み例のご紹介~⑦

2025.10.22

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 長年にわたり自主保全を継続している企業においては、自主保全活動の進め方に工夫を重ねることで、その内容を進化&深化させています。前回に引き続き、近年の自主保全の取組み例を紹介します。

他の柱からの自主保全への支援と協力の体制

 自主保全を効果的に進めていくには、オペレーターや製造部門が単独で行うのではなく、計画保全、個別改善、品質保全、教育訓練、安全衛生環境、初期管理などのTPMの各柱が支援・協力することが必要です。
 各柱が果たすべき役割や機能を明らかにし確実に実施することで、自主保全がより円滑かつ効果的に進むようになり、また設備の信頼性向上のみならず、製品の品質向上、職場の安全性向上、新製品の立上げ期間短縮などにつなげていくことをねらいます。
 図表ー1では、たとえば、自主保全の第1ステップ(初期清掃)では、計画保全(柱)から、エフ取りの際の支援や、微欠陥等の理論的な教育を受けたり、個別改善(柱)から、ロスの考え方やロスの把握方法を学ぶなど、自主保全の各ステップで、各柱からどのような支援、指導などを受けるかが示されています。
*:「Plant Engineer Digital「TPM」とは?」参照 (「TPM」とは? – 公益社団法人 日本プラントメンテナンス協会

図表ー1 自主保全ステップ別各柱の役割・機能(例)

他部門業務の自主保全への移管

 「他の柱からの自主保全への支援と協力の体制」とも関連しますが、オペレーターへの教育訓練、指導、改善支援、設備の改善などを通じて、従来オペレーターが行っていなかった点検作業、潤滑、安全管理、品質管理、復元・復旧などの業務をオペレーターに移管することで、オペレーターの能力を高度化・多能工化するとともに、他部門の担当者の業務をより付加価値の高い仕事へシフトすることをねらいます(図表ー2)。
 自主保全への業務移管率を主な成果指標として管理する企業も少なくありません。これらはとくに海外企業で良く行われる取組みの一つであり、部門間の境界を越えた取り組みが関係するため、経営トップの積極的な関与が重要となります。

図表ー2 自主保全への業務移管率(例)

成果指標のレベルアップ

 自主保全の活動成果が上がるにつれ、従来設定していた成果指標を見直し、さらにハードルをあげることで、自主保全のレベルアップを図り、より成果に直結した活動へと転換を図っていきます。

指標例(1):「エフ付け枚数」(KAI:重要活動指標)
 図表ー3参照。

 取組み当初:動機付け → レベル1:エフ付け内容(潜在/顕在的不具合に関わらず枚数を評価) 
 取組み後 :成果重視 → レベル2:潜在的不具合発掘のエフ付け枚数を評価
            → レベル3:エフ付け/取りによる(予想)効果金額 による評価(&表彰)

図表ー3 エフ付け枚数指標のレベルアップ

指標例(2):「ゼロ指標」(KPI:重要業績評価指標)
 「ゼロの対象」×「設備の範囲」の組合せで指標を設定します。
 指標のハードルを上げることで、求められる改善レベル、技能レベル、成果のレベルを上げていきます(図表ー4)。

 例)レベル0:故障件数
   レベル1:故障ゼロ設備台数
   レベル2:3ゼロ設備台数(故障、不良、災害)
   レベル3:5ゼロライン数(故障、不良、災害、クレーム、チョコ停)

図表ー4 ゼロ指標のレベルアップ

指標例(3):「動作時間(KPI:重要業績評価指標)
 図表ー5参照。

 レベル1:MTBF:故障間動作時間(故障から故障までの動作時間の平均)
 ※設備の信頼性を評価する指標だが、点検や整備などの保全にかかる時間は動作時間に含まれない

 レベル2:介入間動作時間(故障に加え、点検・整備など設備の不可動時間を除く動作時間の平均)
 ※MTBF同様、設備の信頼性を評価する指標だが故障時間に加え点検・整備時間もロスとして捉える

図表ー5 動作時間指標のレベルアップ

情報通信技術を活用した自主保全活動支援

 昨今の情報通信技術の進展は著しく、自主保全活動においても、情報通信技術を活用し、オペレーターの負担軽減、情報共有化による知識・技能の向上、意思決定の迅速化、活動の徹底などを目ざす取り組みが増加してきました(図表ー6、7)。

図表ー6 情報通信技術を活用した自主保全活動支援の事例

図表ー7 情報通信技術を活用した自主保全の効率的運用例

 このように、情報通信技術の急速な進展により、オペレーターの自主保全活動は強力にサポートされるようになり、さらに大きな成果を生み出せるようになりました。

 本連載は以上となります。自主保全の取組みをより実りのあるものにしていただければ幸いです。

*日本プラントメンテナンス協会では、生産分野において日本最大級の資格である「自主保全士認定制度」を提供しており、過去に23万人を超える自主保全士が誕生しています。

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