装置材料の損傷・劣化「べからず集」Vol.4

2025.05.15

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「応力腐食割れ深さ測定、超音波(斜角)探傷試験結果を信ずるべからず」

 ステンレス鋼等の金属材料には、「応力腐食割れ」(Stress Corrosion Cracking、SCCと略す)が発生することがある。SCCが生じた場合に、設備の継続使用の可否や補修の必要性を判断するために、割れ深さを明らかにする必要のある場合がある。割れ深さを非破壊で評価する方法としては種々あるが、「超音波斜角探傷」が一般的に採用される。
 実際には、有資格の検査員が、標準試験片で割れ検出のキャリブレーションを行って、実機のSCC深さを評価することなる。
 しかし、SCCの深さは、「超音波斜角探傷」では精度よく評価できないと考えた方が良い。それは、図に模式的に示すように、SCCの先端部は細い(開口量が小さい)割れが枝分かれしていて分布しており、「超音波斜角探傷」ではとらえられないためである。一般的に、SCCで溶解による開口量の大きい割れ根元部分は、「超音波斜角探傷」でも検出できるので、結果として、SCCの深さを浅めに評価する傾向がある。
 SCC深さを精度良く評価するためには、非破壊検査ではなく表面からグラインダ研削と浸透探傷を繰り返す方法が採用される場合がある。しかしこの方法は、割れ深さが必要肉厚を割り込むと更新か溶接肉盛り補修が必要となり、また割れ発生本数が多い場合には、全ての割れのついて同様の手法を適用して割れ深さを測定することは現実的でない。
 このため経験的には、SCCの表面長さの半分程度は、板厚方向に進行していると想定して、当該設備の継続使用の可否を判断する場合もある。

図 ステンレス鋼の鋭敏化模式図

(A地点では割れの開口量が大きいため、割れ深さを検出可能であるが、B地点では割れ開口量が小さく、割れ深さを検出できない可能性が高い)

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