
苛性ソーダを取り扱う炭素鋼配管のスチームトレース、
常時保温使用すべからず
常温程度の苛性ソーダは、炭素鋼に対して全面腐食性は小さいため、配管材料として一般的に炭素鋼が選択される。ただし、苛性ソーダは、その濃度によるが室温程度で凝固する可能がある。このため、炭素鋼製配管にスチームトレースが施工されることが多い。
配管内に苛性ソーダを連続的に流している場合は問題とならない場合が多いが、受入れ配管などで間欠的に苛性ソーダを流す場合や、苛性ソーダ流量の少ない小径配管などでスチームトレースを流した状態に放置すると、図1) に示すように配管の温度が炭素鋼で応力腐食割れの生ずる温度(約50℃)を超える可能性がある。その場合に、溶接部など残留応力が存在する部位で応力腐食割れが発生し、これが板厚を貫通し、苛性ソーダの漏洩に至る。

図 苛性ソーダ濃度・温度領域にて種々の材料で応力腐食割れ発生条件と苛性ソーダの融点(凝固点)1)
(例として40%苛性ソーダでスチームトレースを設置した場合の温度変化を矢印で加筆)
炭素鋼製配管で応力腐食割れ発生を回避する方法としては、苛性ソーダを流さない場合はトレースのスチームを切るとか、スチームトレースを50℃以下の温水トレースへ変更するとかの対策が挙げられる。また、配管材料を炭素鋼からステンレス鋼に変更することも対策となる。ただし、その場合、図に示すように温度が100℃程度になると、ステンレス鋼にも応力腐食割れの発生可能性があることに注意する必要がある。
参考文献
(1) 腐食防食協会編、腐食防食ハンドブック、丸善、P.380(2000)
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