

冷凍(-34℃)常圧液体アンモニアタンク、応力腐食割れは発生しないと決めつけるべからず
表に示すように常温や冷蔵(0℃近傍)の炭素鋼製や高張力鋼製の液体アンモニア(液安と略す)タンクに、応力腐食割れ(SCCと略す)の発生することは、これまで良く知られている。
このSCCは、温度の低い冷凍(‐34℃程度)では、温度の低いこともあり発生しないと、従来一部で信じられていた。このため、炭素鋼製冷凍液安タンクは、開放検査を行わなくても良い、との運用を行っている会社があった。
しかし、この認識は誤りである。実際に海外では、炭素鋼製の冷凍液安タンクで割れの発生事例が複数報告1)されている。
また、この冷凍液安のSCC抑制するためには、液安中の水分が0.2%程度ある方が良いとか、酸素は共存させないなどの対応策2)が知られている。合わせて、液安環境では溶接部の硬さが、ある一定値を超えると割れの発生すること3)も明らかにされている。このため冷凍液安タンクでも液安タンク製作時や補修時に溶接の施工管理を行うことや、必要に応じて応力除去焼鈍を行う対応が妥当である。
以上のように炭素鋼製タンクは冷凍液安であっても、SCC発生可能性があるとして、製作時の管理や運転中の環境制御、および定期的な開放検査での割れ発生の有無の必要がある。
なお、割れは突合せ溶接部等でも発生するが、溶接のための治具を固定するための溶接部跡4)でも発生する。このため、開放検査においては、治具溶接部の検査を行うことも必要である。
表 液体アンモニアの貯蔵方法と応力腐食割れの発生

参考文献
(1) L. Lunde, R. Nyborg, Ammonia Plants & Related Facilities Symposia, AIChE (1986)
(2) Max Appl, Karl Fäßler, Dieter Fromm, Hans Gebhard, Herbert Portl, Ammonia Plants & Related Facilities
Symposia, AIChE (1989)
(3) 桝本弘毅, 圧力技術、第18巻第6号, 日本高圧力技術協会(1980)
(4) 中原正大、材料と環境’99、腐食防食学会、B-309S(1999)
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