

国立大学法人 九州工業大学
支援研究員・客員教授
堀田 源治
九州工業大学、有明工業高等学校で教鞭をとる他に、堀田技術士事務所(ETC)の代表として企業向けコンサルタント活動(保全・安全・人材育成など)や学協会の委員・役員活動(日本技術士会、日本材料学会、日本設計工学会)を実施中。
資格:職業訓練指導員
1級技能士
技術士(機械部門)
博士(工学)
力の釣合い・モーメントの釣合い
力の釣合いの例として玉掛けを例に挙げて説明してきた。力学をさらに学ぶためにはモーメントその釣合いについて知る必要がある。実際には力の釣合いとモーメントの釣合いの二つが揃って始めて静力学が実務に広く使えるようになる。物体が静止をしている、又は等速度運動をしている場合には「力の釣合い」と「モーメントの釣合い」が同時に成立している。力は物体を直線方向に動かすがモーメントは物体を回転させる働きがある。

図表-1 一本吊り
一本吊りの玉掛けにおいて吊り上げ用ホイストが停止している場合を想定すると、図表-1(a)のように垂直方向には張力tと重力Wが釣り合っているので上下方向に動くことは無い。しかし、同図(a)において吊荷の左端Aに手を添えて手前から奥に向かって外力F1を加えると、図表-1(b)のようにロープを中心としてくるくると回転する。これは吊荷にモーメントM1が加わって吊荷が回転運動を行うためである。つまり図表-1において吊荷は静止の状態ではなく、「釣合い」が成立していない。言い換えれば「釣合い」が成立しない限りモノは静止できないのである。
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